KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
フェイスブック「リブラ」が方針転換、ただの「電子マネー」に?
Bill Clark/CQ Roll Call | AP Images
Facebook’s digital currency project just got a lot less audacious

フェイスブック「リブラ」が方針転換、ただの「電子マネー」に?

フェイスブックが同社独自の暗号通貨「リブラ」について新たなホワイト・ペーパーを発表した。「世界通貨」を目指すとした当初の計画は大幅にトーンダウンしており、もはや暗号通貨とさえ呼べないものになるかもしれない。 by Mike Orcutt2020.04.21

「リブラ(Libra)」を覚えているだろうか? 世界規模のデジタル通貨を開発するというフェイスブックの計画だ。2019年6月に計画が発表されるや否や、世界中の政策立案者や中央銀行に猛反対された。その後、開発チームは振り出しに戻り、この4月16日に新たなビジョンとともにリブラを再登場させた。当初の計画よりもかなり謙虚になった形だ。

重要な変更点を以下にまとめる。

真新しい計画
当初のビジョンではリブラは、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円、シンガポール・ドルといった法定通貨の混合建ての現金と低リスク国債に裏付けされた「単一のステーブルコイン(安定通貨)」になるとしていた。しかし、新たなリブラはそうではない。

新たに発表されたリブラのホワイト・ペーパーによると、規制当局の主な懸念は「複数通貨を組み合わせたリブラが、金融自主権を侵害する可能性」だったという。そこでリブラは新たな戦略を取ることにした。リブラを管理するためにフェイスブックが立ち上げた非営利組織「リブラ協会(Libra Association)」が、単一通貨建ての「複数のステーブルコイン」を発行するのだ(ドル、円など裏付けとなる通貨ごとのリブラが発行される)。当初計画されていたリブラ通貨も発行されるが、「リブラ内で利用可能な単一通貨建てステーブルコインを複数組み合わせたデジタル通貨」になる見込みだ。

中央銀行を歓待
ホワイト・ペーパーによると、新たなアプローチは「中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)が利用可能になった際にシームレスに統合するための明確な道筋」を作ることになるだろうとしている。さらに、将来的に各国の中央銀行が、すでにリブラ上に存在する通貨のデジタル版を独自に発行する場合には、リブラ協会は単一通貨建てのステーブルコインをCBDCと置き換える可能性があるとも付け加えている。

もはや「暗号通貨」とは言えないのかもしれない
リブラはビットコインや他の暗号通貨ネットワークを管理する技術(ブロックチェーン)の影響を受けた分散型台帳技術を使うことになるだろうが、暗号通貨純粋主義者の中に、リブラを真の暗号通貨とみなす者はほとんどいないだろう。ビットコインや同種の暗号通貨は、その特徴として「非許可型 (パーミッションレス)」であることが挙げられる。これは、適切なハードウェアを有する者であれば誰もがネットワーク上の共有ソフトウェアを実行でき、進行中の新たなトランザクションに対する承認作業に貢献できるとする形態だ。一方、リブラのネットワークにおける承認者は、リブラ協会の審査を受け、許可を得る必要がある。

当初の計画では、許可型ブロックチェーンは出発点に過ぎないものであるはずだった。発表当時のホワイト・ペーパーでは、最終的には非許可型ブロックチェーンへ移行するとしていた。しかし現在、リブラ協会は規制当局と折り合いがつかないと決断したようだ。フェイスブックのブロックチェーン部門の責任者であるデビッド・マーカスはツイッターで、当初の計画に代えて「オープンで競争力のある市場主導型ネットワーク」を目指す新たなアプローチを掲げることにしたと述べている。

マーカスもホワイト・ペーパーも、「オープンで競争力のある市場主導型ネットワーク」が具体的に何を意味するのかは明らかにしていない。しかし、リブラが一般に「暗号通貨」と呼ばれるものと一線を画すことになることは明らかだ。

人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 准編集者
暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る