経済再開へ向け「6つの指標」、カリフォルニア州知事が発表
米国でもっとも多くの人口を抱えるカリフォルニア州は、新型コロナウイルス感染症対策で積極的な行動をとっている。州知事はこのほど、屋内退避措置の緩和を検討するための6つの指標を発表した。 by James Temple2020.04.16
ほとんどの米国人の頭の中にいまあるのは、「いつになったらまた外出できるのか?」という質問だ。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事は4月14日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる屋内退避措置を州や地方自治体が緩和する時期を決定する重要な指標を示すことで、その質問に答えようとしている。
カリフォルニア州の住民が外出できるようになるには、新型コロナウイルス感染症の蔓延を監視し、拡大を遅らせる能力を構築することが必要だ。具体的には、より広範な検査の実施と、感染者への接触者を調査して追跡する大規模な取り組みの組み合わせが必要となる。接触者追跡により、衛生当局が大勢の州民に対して誰が感染者なのかを特定し、さらにその感染者が感染させた可能性のある人々を特定して、隔離または検疫に向けた措置を講じられるようになる。
カリフォルニア州はこのほかに、現状の措置の変更に関する5つの「指標」を挙げている。
- 病院が、さらなる新型コロナウイルス感染症の急増に対応できる能力を確保すること
- 高齢者福祉施設に入居中の高齢者などの高リスクグループに、保護手段を配備すること
- 学校や保育施設、事業所に、生徒や従業員および顧客間での安全な距離の確保を義務付けること
- 必要な治療法の開発および提供を実現できる体制を整えること
- 厳格な措置を解除する地域が、措置の再開に関する明確なガイドラインを作成すること
ニューサム州知事は4月14日の記者会見で、これらの指標の大半が達成できる具体的な評価方法の詳細については語らなかったが、カリフォルニア州は一部をアメリコー(AmeriCorps)やカリフォルニア・ボランティア(Cal Volunteers)などのボランティア組織に頼りながら、数千人規模の接触者追跡チームを組織する必要があると述べた。
カリフォルニア州保健福祉局のマーク・ガリー局長は、「次の数週間」の目標として、新型コロナウイルスへの感染が疑われる人の検査を毎日数万件実施できること、感染経験の有無を示す抗体検査を強化することが必要だと付け加えた。
ニューサム州知事は、屋内退避命令の解除日を提示するのは時期尚早だと強調したが、今後2週間で入院治療や集中治療室の必要性が減少し、上記の措置が概ね実施された場合には、5月上旬には屋内退避命令の解除に対応できるかもしれないとも述べている。
「手を引く時期が早すぎたという過ちは避けなければなりません。人命を危険にさらすような政治判断をしてはいけないからです」。
ニューサム州知事はまた、州は郡や市レベルでの意思決定に深く関わることになるだろうと強調した。
カリフォルニア州はアウトブレイクの速度を抑制させるべく、米国内でもっとも早く、もっとも積極的な行動を取っており、3月19日には屋内退避措置を実施している。この取り組みによって、新型コロナウイルス感染症に関する「流行曲線の平坦化」に成功したと見られ、カリフォルニアは米国でもいち早く部分的な再開を検討できる州となった。カリフォルニア州の指針は、規制緩和に向けた独自の計画を検討しているその他の地域にも影響を及ぼす可能性がある。
4月13日には、ニューサム州知事はオレゴン州とワシントン州の知事とともに、「西海岸3州において、新型コロナウイルス感染症蔓延の確実な防止に向けて緊密な連携および協力体制を取ること」を合意した、西海岸3州協定の締結を発表した。 同様に、東海岸のコネチカット州、デラウェア州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州およびロードアイランド州も、規制緩和の意志決定を指導する専門家および当局者による協議会を設置することに合意している。
連邦政府の失態が相次ぐ中、州政府は検査能力の整備から必要な医療機器の確保まで、アウトブレイクの全体に渡って、市民の批判に率先して対応してくことが求められている。早期の経済活動再開への意気込みを見せるトランプ大統領は、4月13日の記者団へのコメントとツイッターへの書き込みで、経済再開の意志決定の権限は州知事ではなく自らにあると反論し、今後数カ月間におよぶであろう政争の火種を撒いた。
記者がトランプ大統領の発言について尋ねたとき、ニューサム州知事は「我々はただやるべきことを成し遂げたいだけなのです」とだけ述べ、直接的なコメントを差し控えた。
カリフォルニア州の指針は、他の医療専門家が提案している推奨事項にも即したものとなっている。
ゲイツ財団やチャン・ザッカーバーグ・イニシアティブなどの慈善団体が支援する公衆衛生擁護団体「リゾルブ・ツー・サーブ・リブ(Resolve to Save Lives)」は最近、各地域が緩和措置を検討できるのは、特に新型コロナウイルス感染症の感染者数と死亡者数が14日以上に渡って減少し、その地域で感染者数が突然倍増した場合でも必要な保護具や人員、病床、医療機器などを含め、対応可能な能力を備えている場合に限ると述べた。
またニューサム州知事は、保健専門家の意見に同調する形で、屋内退避命令の解除後も市民や企業は社会的距離の確保(ソーシャル・ディスタンス)を継続する必要があると強調し、飲食店はテーブル数を半減させ、客には検温を求め、接客係にはマスクと手袋の着用を義務付ける必要があるかもしれないと述べた。
特に、新型コロナウイルス感染症に感染しやすい高齢者などの集団は、引き続き自己隔離する必要があり、誰もがマスクを着用し、外出時には他者と6フィート(約1.8m)の距離をとる必要があると医療専門家らは述べている。実際に4月14日に発表された科学論文によると、病院が新型コロナウイルス感染症患者で溢れかえるような状態を予防するには、「社会的距離措置の長期化または断続化」が2022年まで必要になる可能性があるという。
ニューサム州知事は、各地域はその後の新型コロナウイルス感染症再発の早期兆候に対する厳戒態勢を継続し、また、必要に応じて厳格な措置を迅速に再開できる準備が必要だと強調した。
「私たちが集団免疫を獲得するか、ワクチンができるまでは、平常に戻ることはないでしょう」。
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- ジェームス・テンプル [James Temple]米国版 エネルギー担当上級編集者
- MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。