世界でもっとも利用されている2つのモバイルOSが、過去に例を見ないアップデートをわずか数週間以内に実施する予定だ。アップルとグーグルが協力し、iOSとアンドロイドに追加する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の追跡機能の開発を進めている。
感染者とその濃厚接触者を追跡してアウトブレイクの広がりを抑える接触者追跡は、新型コロナウイルス感染症などの病気と戦う上で重要な手段だ。だが、対象者から聞き取りをしたり、行動経路の詳細を調べたり、あるいは電話をたくさん掛けたりと、とにかく多くの労力を必要とする。こうした作業をテクノロジーによってもっと早く、プライバシーやセキュリティ、自由を侵害することなく実行できないだろうか?
アップルとグーグルが開発を進めているシステムは、スマートフォンのBluetooth(ブルートゥース)を使って、近接者を匿名で追跡するというものだ。システムの利用に同意すると、新型コロナウイルス感染症と診断された人が近くにいたことを検出する(ただし、あくまで相手もこのシステムを利用していればという条件付きだ)。感染者が一定期間内に接触したユーザーのスマホに通知が送られ、危険に晒されたことを知らせる。感染者が誰かを知る方法はなく、感染者も誰に通知されたかは分からない。
最初の本格的なリリースは5月中旬以降になる予定だが、4月14日時点での情報を見る限り、アップルとグーグルのこの共同システムはよくできていて拡張性も高いようだ。ただ、開発中のシステムであり、現時点では疑問も多く残っている。
最大の疑問は、プライバシーと信頼性だ。アップルとグーグルが公衆衛生機関と共同で開発したアプリ(編注:アップルとグーグルは接触者を検出するAPIを開発し、ユーザーが実際に利用するアプリは公衆衛生機関が開発・配布する)を、人々はダウンロードするだろうか? アプリの正確さを信頼するだろうか? 個人データが保護されると信じるだろうか? 接触者追跡は結局のところ監視の一形態であり、この監視システムが回り回って自分を監視することを心配しないだろうか?
新型コロナウイルス感染症のパンデミックと戦うため、接触追跡アプリなどの監視テクノロジーを政府がすでに開発し、使用している国もある。しかし、それらのアプリは、何らかの妥協を強いるものであることが多い。
独裁政権国家として国民への過剰な監視が長く続く中国では、隔離か自由に移動できるかを政府が指示するアプリの使用を国民に義務づけ …