サンフランシスコ市は米国で初めて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査のすべての陽性者と面接し、接触者を追跡するための対策チームを組織している。誰にウイルスを感染させたのか、誰が感染した可能性があるのかを見つけ出すのが目的だ。感染者を隔離し、ウイルスに曝露した可能性がある人々に警告し、最終的には感染を食い止めることを願っている。
市公衆保健局は市の図書館職員、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の大勢の研究者、医学生などによってスタッフを増員している。市の医療従事者はすでに小規模な接触者追跡を実施しているが、数週間で大幅に規模を拡大する計画だ。対策チームは40人ほどのメンバーだが、150人にまで増える可能性がある。
対策チームは検査で陽性だったすべての患者に聞き取りをし、患者自身の完全な隔離を確実にするために必要な支援を提供する。必要に応じて隔離場所を見つけたり、隔離場所への移動の手助けまでする。また対策チームは、患者が陽性と判明するまでに接触した3〜5人と連絡をとるようにしている。接触者には、新型コロナウイルスに曝露した可能性があると警告し、他人との接触を自粛するよう求め、検査を受けるように勧めるか、または検査キットを持参する。検査で陽性が確認されれば、また一連の面接と接触者の追跡を実施していく。
「自宅隔離から解放し、外出できるようにするには、持続可能で堅固な感染封じ込め戦略が必要です。それは、新たな感染者と接触者をすべて明らかにできるようにすることです」。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のマイケル・リード助教授(感染症学)はいう。リード助教授は市の対策チームに協力しているコーディネーターだ。「そして、この戦略は、中期的な予測としてはワクチンが手に入るまで実施する必要があります」。
ベイエリアはアウトブレイクを遅らせるために、米国でもっとも積極的かつもっとも早くさまざまな措置を講じており、新型コロナウイルスの感染者の増加を示す曲線を平坦化する(感染者数の増加を遅くする)ことに成功していると見られている。だが、ベイエリアでは依然として1日数百人もの新規感染者が報告されており、死亡者数も増えている。
新型コロナウイルスは感染力が強く、社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)をとらなければ、1人の感染者から平均2~3人に感染する。基本再生産数が最大推定値の「3」だとすると、感染が10回繰り返されると5万9000人以上の感染者が出ることになる。「ですから接触者とできるだけ早く連絡をとり、家に(中略)留まるように伝えなくてはなりません」。
注目すべきマサチューセッツを含む他の地域でも同様に、ウイルスに曝された可能性のある数千人の住民を特定して、連絡をとるための大規模な追跡の取り組みを計画している。しかし、ベイエリアがどのように感染者の特定と接触者追跡をするのか、それによって現在の感染拡大スピードを遅らせ、これ以上のアウトブレイクを防げるのかは、他の地域に極めて重要な教訓、または警告をもたらすかもしれない。
初期の積極的な対応
サンフランシスコ市のベイエリアは米国でもっとも早く新型コロナウイルス感染症の症例が発見された地域の1つで、2月26日に感染経路不明の感染者が確認され、地域社会への感染が拡大した。3月16日にはカリフォルニア州の6つの郡で700万人近くの住民に数週間、外出自粛命令が出された。その3日後、カリフォルニア州のギャビン …