2016年に遺伝子療法が単なる希望から実際の治療に変わったのは、少数の幸運な患者だけだ。長い間、人間のデオキシリボ核酸(DNA)を書き換え、病気を除去する手法として研究されてきたテクノロジーは、大きな進歩を遂げ、世界で最も高価で革命的な医薬品として提供される現実のビジネスに変わり始めたのだ。
では、そもそも遺伝子療法とは何なのか? 米国食品医薬品局(FDA)は、置換遺伝子を人体に加えたり、病気の原因になっている遺伝子を不活性化したりする全ての治療を指すという。通常は、正しいDNA鎖が詰め込まれた数十億のウィルスによって細胞に新しい指示を加えることだ。
複雑に聞こえるが、実際複雑だ。遺伝子療法は1990年に初めて人間で試されたが、恐ろしい副作用が起こし、遺伝子修正のアイデアは科学的停滞に変わってしまった。いまでも、遺伝子修正分野で全ての問題は克服されていない。今年MIT Technology Reviewは、遺伝で受け継いだ遺伝子の損傷を正常化する最初の遺伝子治療法として承認されたグリベラの話題で一年を始めた。しかし実際にグリベレアが市販されると、超高額な100万ドルの値が付けられ、どれほどよく効くのかの疑問が生じ、結局は医療的にも商業的にも失敗に終わった。
しかし科学者もバイオテクノロジーの起業家も諦めていない。以前に増して遺伝子療法が本物だという証明に近づいている。以下は2016年に起こったことだ。
初の根治療法:遺伝子療法の夢は、患者のDNAを修正し、病気が再発しないように「治癒」することだ。2016年、ミラノ(イタリア)にあるサン・ラファエル・テレソン遺伝子治療研究所(SR-Tiget)の科学者は、稀な重度免疫不全症ADA-SCIDの子どもの患者18人を治癒したと報告した。SR-Tigetは、子どもから骨髄細胞を採取し、欠落していたADA酵素作成遺伝子を追加した後、置換した。MIT Technology Reviewはこの治療法(現在は「ストリムベリス」と呼ばれ、グラクソに所有権がある)が14年の歳月をかけてどのように開発、治験されたか解説した。ストリムベリスはヨーロッパで2016年5月に認可された。
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