2016年はクリーン・エネルギー・テクノロジーがかなり前進した年になった。パリ協定の発効、太陽光発電システム設置価格の下落、再生可能エネルギー関連への投資の増加、アメリカ国内での洋上風力発電の開始、さらに持続可能エネルギーをより手頃な価格で効率よく作れる技術的進歩が、科学者よって成し遂げられた。
気候変動による最悪の影響を避ける一番確実な方法は、現段階では発明だ。したがって、テクノロジーの進歩は、世界を次に進める鍵になる。現在事業化できる再生可能系テクノロジーがどんなに急激に拡大しても、世界の全エネルギー需要には応えられない。米国立再生可能エネルギー研究所の詳細分析によると、米国は2050年までに温室効果ガスの削減目標に20%程度届かない。一方、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が出した結論によれば、海面上昇や大量絶滅、広範な干ばつが確実に起きる二酸化炭素濃度を回避するには、地球全体で温室効果ガス排出量を21世紀半ばまでに70%、2100年までにはほぼゼロに削減する必要がある。
したがって人類に必要なのは、効率の高い再生可能エネルギー資源とより安価な二酸化炭素の貯留、さらに高度なスマートグリッド(送電網)、温室効果ガスを回収する効果的なシステムだ。そこで2016年、最も有望な科学的進歩を紹介する。
人工光合成
再生可能エネルギー資源に欠けているのは、ガソリン等の輸送燃料に取って代わるクリーンな液体燃料だ。最も有力視されているテクノロジーのひとつが人工光合成だ。自然界の光合成を再現し、太陽光と二酸化炭素、水を燃料に変える。
ここ数年、人工光合成分野の研究は停滞気味で着実な改善はなかったが、今年の夏、ハーバード大学のダニエル・ノセラ教授とパメラ・シルバーズ教授は共著者と共同で、日光に含まれる10%のエネルギーを回収して変換する「バイオニック・リーフ」を開発し、人工光合成分野に大きな前進をもたらした。平均的な植物における光合成の約10倍の効率がある。
研究では、コバルト・リン合金を用いた触媒を使い、水を水素と酸素に分解させる方法を使った。その後特別に組み換えられたバクテリアに大量の二酸化炭素と水素を吸収させ、液体燃料に変換する。
ローレンス・バークレー国立研究所や人工光合成統合センターなど、他の研究所も太陽燃料装置の効率性と耐久性において、ここ数カ月で著しい進歩を遂げた。人工光合成統合センターは今年10%の効率レベルで二酸化炭素をギ酸に変換できる太陽燃料装置を開発した。ギ酸は専用燃料電池のエネルギー資源として使える。
ただし、以前MIT Technology Reviewでも記事にしたとおり、人工光合成の分野が大変な技術的難関にぶつかっているのは事実であり、 …