シアトル在住のスタートアップ企業の創業者であるラッセル・ベナロヤは、プロジェクト管理ソフトウェア「アサナ(Asana)」が大好きだ。実際、ベナロヤは、アサナが自分の結婚生活を救ってくれたと主張している。そして現在、アサナを使用して新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)危機による休校で自宅にいる自分の子どもたちのためにスケジュール表を作っている。
「今夜は家族会議をする予定です。子どもたちの時間を有意義なものにするために何ができて、いかにしてやり遂げるかについて話し合うつもりです」。
米国では、自宅待機の命令がいつまでも続き、休校が延長されている。そうした中で、家族たちは、何日も何週間も自宅に閉じ篭って過ごしながら、根底から覆された生活に秩序をもたらそうと躍起になっている。
そこで注目されているのが、アサナや「トレロ(Trello)」といったプロジェクト管理ツールだ。親たちは、仕事でタスク管理に使用していたこうしたソフトウェアが、自宅隔離中の子どもたちの管理にも役立つかもしれないと気づきつつある。プロジェクト管理ツールを、ホワイトボードやグーグルカレンダー、そして昔ながらの紙と鉛筆の代わりにするのだ。
職場での生産性管理ツールを家庭に応用するのはそれほど珍しいことではない。自宅で孤立していることが「新たな常態」になっている家族にとって、かつては家庭だけであった場所がいまや学校であり職場でもある。プロジェクト管理ツールを利用し、パンデミック下における家族のあり方を、解決すべきビジネス・タスクだと捉えることで、この明らかに普通ではない時にも、働く親たちがある程度正常な環境を維持できる。
「トレロは、親たちがこの異常な状況において物事を管理するのに十分役立つ作りになっています」。トレロのマーケティング責任者であるステラ・ガーバーはそう説明する。「トレロは非常に視覚的であり、カスタマイズしやすいソフトです」。
ガーバーは正確な数字は明らかにしないものの、会社のメールアドレス以外からトレロに登録する人が世界中で増えているという。アサナのプロダクト責任者であるアレックス・フードもまったく同様だと述べている。
我が家の家族4人向けに、来週からアサナ・プロジェクトを開始。
COVID-A-RAMA #wip #prayersup #wfh pic.twitter.com/mdtczYvLoh
— 家にいよう、手洗いしよう💦👏🏽 (@domcoballe) 2020年3月14日
naturally i started an asana project for our family of 4 starting next week
COVID-A-RAMA #wip #prayersup #wfh pic.twitter.com/mdtczYvLoh
— stay home wash hands 💦👏🏽 (@domcoballe) March 14, 2020
カナダのオタワ郊外に住むドミニク・コバルもベナロヤと同じように、家庭で妻と家事を分担するのにアサナを活用してきた。自宅待機令が最初に発表された時、7歳と10歳の2人の息子の状況はやや混乱していたという。しかし2週目を迎えると、「新型コロナウイルスをめぐるさまざまな状況に圧倒されてお手上げ状態になるのではなく、何らかの規律を適用すべき」だと気づいたと言う。
コバルが子どもたちの予定表をアサナで作成した時、最初は冗談だった。しかし、すぐにこのアイデアは実用的なものになった。コバルは、「第2週目までに子どもたちにはアサナの仕組みが必要となりました。KPI(重要業績評価指標)はまだ達成できていませんけどね」と笑う。
夫は新設されたホームスクールで来週から教えることに不安を感じています。そこで私たちは、もちろんトレロでボードを作りました。子どもからのリクエストや私たち自身の自宅活動、オンラインで出来るさまざまなこと、学校からの課題の他に、参加を依頼した家族や友達によるバーチャルクラスを組み合わせました!pic.twitter.com/gVRkGdjAyY
— オードリー・フレッチャー(@avfletcher) 2020年3月21日
Husband is nervous about teaching at the newly established FletcherSchool next week…so of course I've made a Trello board. It's a combo of kids requests, our own home activities, online gems, learning set by school, and co-opted family and friends running virtual classes! pic.twitter.com/gVRkGdjAyY
— Audree Fletcher (@avfletcher) March 21, 2020
スタートアップ企業でよく使われる言葉を子どもに対して使うのは、コバルに限ったことではない。ベナロヤは夜に、アサナを使った家族の予定表作りを手伝うよう子どもたちに提案するつもりだが、抵抗されるだろうと話した。「ビジネスであれ個人的なものであれ、ソフトウェアを新しく導入するのは、自らが経験している問題を解決するソフトウェアに対する準備ができていない限り、厄介に感じるものです。自発的に自分の時間を使って物事を成し遂げる感覚について家族で話し合いたいと思っています」。
デザイナーとして英国政府関係の仕事をするオードリー・フレッチャーによると、6歳と8歳の2人の娘は、スケジュール管理ツールを使って朝にしたいことを選ぶという。「娘たちは画面を使うのが好きですし、選択肢があることを好みます」と述べる。こうしたソフトウェアを使うことで、夫と「それぞれ異なるタイミングで協力し合う」ことが可能になり、負担が軽減したと付け加え、「子どもたちの元気度合いやその日の天気に合わせるのは簡単です。テンプレートがあれば、翌日や翌週の予定をより短時間で作れます」と説明する。
プロジェクト管理ツールについて話すといつも出てくる単語がある。それは「Nagging(口やかましく言う)」ということだ。
「アサナがあれば、何かと口やかましくなる必要はありません」とアサナのプロダクト責任者であるフードは言う。ベナロヤは、アサナの利用は基本的に「妻に口うるさく言うのを避ける」ためだと言う。コバルも同じ意見だ。フレッチャーは、「夫とコミュニケーションを取り、議論し、お互いがやってきたことを把握するため」にトレロを利用すると述べている。
実際、誰のためにトレロやアサナのようなツールを家庭で使うのかといえば、「親のため」というのが根底にある。とりわけ望まない現実の中で、時間と空間について相手と折り合いをつける必要があるパートナーたちのためである。
「私たちは親としてそれを望み、対処してきました。100パーセント子どもたちのためだけだとは言えないでしょうね」とコバルは話している。
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