Facebookを使うことは、取引と同じだ。友だちや家族、愛する人、直接話したことがない高校生ともタダでつながれ代わりに、フェイスブックはユーザーの情報を収集している。フェイスブックはユーザーのプロフィール情報や「いいね!」を押した記事やサイト、視聴したビデオの情報を使って、広告を売っている。
しかし、話はそう単純ではないことがわかってきた。フェイスブックはオンライン上の個人情報との交換でユーザーに無料サービスを提供しているはずだが、現在進行中のプロパブリカの調査によれば、フェイスブックはこの暗黙の合意を逸脱しているのだ。フェイスブックは複数の個人データ販売業者と契約し、ユーザーの現実世界での情報(いくら稼いでいるか、どこで食事するのが好きか、クレジットカードは何枚持っているかなど)を取得しているのだ。
フェイスブックはこうしたデータを使って広告用のユーザー属性を増強していることを、当のユーザーには知らせていない。
フェイスブックの広告事業には脅威の精巧さがある。確かに、Facebookには膨大なユーザーがいる。しかし、広告主にとって本当に魅力的なのは、マーケティング担当者があらゆる種類のパラメーター(ユーザーが共有した興味・関心や政治的立場、年齢、使用しているモバイル機器の種類)に基づいて、広告を見ることになる対象ユーザーを細かく分けられることだ。
この種のマイクロ・ターゲティングは非常に価値がある。であれば、マイクロ・ターゲティングの性能を向上させるために、オフライン時の行動に関するデータセットを買い集めて、フェイスブックのユーザーと照合するのに、どんな方法が優れているだろうか。たとえば、食べ物を扱うサイトで誰が「いいね!」を押したかを単に知るより、毎年いくら稼いでいるのか、買い物をする店は、安売り店なのか高級店なのかを知る方がはるかに役に立つはずだ。
ここで重要なのは、ユーザー情報の収集方法やユーザーに割り当てている興味・関心のカテゴリーについて、フェイスブックは透明性があることを誇示していることだ。この情報は、Facebookのサイト上で誰でも確認できる。
調査の一環として、プロパブリカはユーザーが自身の情報を確認しやすくするツールを作成し、発見したことを共有するようにユーザーに呼びかけた。9月以降、ツールによって「気まずい状況でメールを打つ振りをする」から「公共の場で授乳する」まで、5万2000件以上の興味・関心カテゴリーが見つかった。
ただし、プロパブリカがフェイスブックの広告プラットフォームを実際に利用し、広告主が広告のターゲット設定に使えるパラメーターを確認したところ、「サードパーティから提供されました」と記述されているカテゴリーは600近くだった。カテゴリーのほとんどがユーザーの経済状況と関係がある一方で、ユーザーから収集した興味・関心のカテゴリーリストは何もなかった。つまり、フェイスブックの透明性には限界があるのだ。
(関連記事:ProPublica, “「巨大な未完成企業」フェイスブックは2017年が正念場,” “What Facebook Knows”)