オープンソースのニューラル・ネットワーク「COVIDネット(COVID-Net)」が今週、公開された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査用の人工知能(AI)ツールの実現へ向け、世界中の研究者による共同開発に役立つ可能性がある。
COVIDネットは、特に画像認識に優れたAIの一種である「畳み込みニューラル・ネットワーク(CNN)」である。ウォータールー大学のアレクサンダー・ウォン教授と助手のリンダ・ワン博士、カナダのAI企業ダーウィンAI(DarwinAI)らによって開発された。COVIDネットは、細菌感染症、新型コロナウイルス以外のウイルスによる感染症、新型コロナウイルス感染症など、さまざまな肺疾患を抱える患者2839人の胸部X線画像5941枚を使い、胸部X線画像から新型コロナウイルスの兆候を検出するよう訓練された。ツールとともにデータセットが提供されているため、研究者らがツールを検証したり、調整したりできるようになっている。
ここ数週間で複数の研究チームが、X線画像から新型コロナウイルスを診断できるAIツールを発表している。だが、完全に一般公開されたものはなく、その正確性を評価するのは難しい。ダーウィンAIはそうしたツールとは異なるアプローチを取っている。COVIDネットは「決して製品レベルのソリューションではない」としており、研究者らに改善のための協力を呼びかけている。同社はまた、診断理由を説明できるようにして医療従事者がツールを利用しやすくしたい考えだ。
COVIDネットの能力はまだ証明されていないが、過去の成功体験と同じ道をたどっている。過去10年間のコンピューター・ビジョン分野の大きな進歩には、何百万枚もの画像を含む大規模なデータセットであるイメージネット(ImageNet)と、それを使って訓練された畳み込みニューラル・ネットワークのアレックスネット(AlexNet)の一般公開が大きく貢献している。これらの公開以来、イメージネットとアレックスネットはAI研究に活用されてきた。
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