2019年の夏にフェイスブックがリブラ構想を発表した時、中央銀行の状況は一変した。大多数の反応は、自前のデジタル通貨を発行すべきかどうか、するとしたらどのように発行するのかを真剣に調査するというものだった。
だが、もっと根本的な変化が10年以上前から進んでいたことはほぼ間違いない。仲介者を使わずにデジタル資産の送金を初めて可能にしたビットコインは、従来の金融システムと真正面から競合するモデルだった。攻撃に対するビットコイン・ネットワークの回復力は、システム構築には別のやり方があることを示している。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のキャンパスで3月に開かれたMITビットコイン・エキスポ。私は中央銀行業務や暗号通貨に詳しい専門家との座談会でモデレーターを務めた。中央銀行が自前のデジタル通貨システムの設計を始める時に考慮すべき実際的な懸念について話し合われた座談会で、専門家に共通したのは、中央銀行はビットコインから学ぶべきことが多い、という認識だった。
セキュリティは回復力によって実現できる
米国連邦準備制度は現時点で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を計画していない。ボストン連邦準備銀行で応用フィンテック研究を指揮するボブ・ベンチは、もしCBDCを発行するなら、必要条件トップ10のうち9つまでがセキュリティ関連になるだろうと述べた。「CBDCが稼働した瞬間から、世界でいちばん攻撃されるプログラムになるのは間違いありません」。
MITメディアラボ・デジタル通貨イニシアチブのロブレ・アリ科学研究員は、ビットコインは透明性、暗号、経済的インセンティブを組み合 …