テキサス州はビットコイン採掘者(マイナー)にとって、新しい約束の土地なのだろうか? いくつかのビッグマネー・プロジェクトの支援者がこの考えに賛同しているのは、テキサス州の安価な電気と独自の規制のおかげだ。 採掘者らの野心的な計画が実現された場合、世界で最も普及している暗号通貨ネットワークの重要な構成要素の地理的分布に、大きな変化をもたらす可能性がある。
ビットコインの採掘(マイニング)の成功は、その施設が採掘作業に使える電力量に大きく依存している。新しい採掘施設の発表が、たびたび新しい発電所の発表のように報じられる理由だ。テキサス州西部で本番稼働したプロジェクトは、投資家ピーター・ティールが支援したことで特に注目を集めた。ティールやその他のベンチャー投資家から5000万ドルを調達したレイヤー1・テクノロジー(Layer1 Technology)が立ち上げた施設は、100メガワット(MW)の電力を採掘用にまもなく供給する予定だという。
中国に本拠を置く大手マイニング・チップメーカーであるビットメイン(Bitmain)もテキサスに移転し、2019年10月、ロックデールに50MWの施設を開設した。ゆくゆくは300MWに拡張する予定だという。世界で3番目の大手マイニング・チップメーカーであるドイツのノーザン・データ(Northern data)も、やはりロックデールに世界最大の採掘施設を建設する計画で、1ギガワット(1000 MW)の電力を暗号通貨の採掘に充てるという。ケンブリッジ大学の研究者の推計によると、現在のビットコインのネットワークは、10ギガワット(GW)強を使用している。
例に挙げたのは、いずれもテキサス州を代表する注目の採掘事業だけだが、安価な電力を追い求める他の多くの企業からも、テキサスに施設を設置する計画が発表(あるいは噂)されている。
ビットコインが大量の電力を消費するのは、中央機関に依存しない公開型の分散台帳であるブロックチェーンの安全性を確保するためだ。ケンブリッジ大学の研究者の推計に基づくと、ビットコイン・ネットワークの年間電力使用量は、フィリピンとベルギーの国家電力使用量の間に位置する。ビットコイン・ネットワークの信頼性を証明するべく、世界中に分散する数千人の採掘者が絶えず大量のコンピューティング・パワーを消費しているのは、複雑な暗号パズルを解決する競争のためだ。この競争で勝者になると、10分ごとに新しいトランザクションの「ブロック」を台帳に追加する権利を …