中国の大手遺伝子解析企業であるBGIグループ(BGI Group)が、過去に米国で開発された技術を用いて、未だかつてない低コストのゲノム・シーケンシングを可能にすると発表した。100ドルの壁を突破するのは、ゲノム解析史上初となる。
深圳に拠点を置くBGIグループは、これから提供予定の「最高峰の」DNAシーケンシングシステムが、低コストで利用可能になると述べている。このシステムでは、年間10万人のゲノムを解読できるという。
2月26日にフロリダ州マルコ島のDNA技術に関する会議で発表された内容により、BGIとカリフォルニアの遺伝子解析企業であるイルミナ(Illumina)との間で、競争が激化する可能性がある。イルミナの高速シーケンサーは、10年以上にわたり遺伝子シーケンシングの分野で他の追随を許していなかった。
「BGIの発表が本当に真実なのかを疑問に思うのは、自然なことだと思います」。そう語るのは、マサチューセッツ州ケンブリッジのブロード研究所でゲノミクス・プラットフォームの責任者を務める、ステイシー・ガブリエル博士だ。「100ドルが本当なら、これまでより数倍安いことになります。ここ数年、シーケンシングに関する大きな発表が見られなかったので、ちょっとした騒ぎになっていますよ」。
2003年にヒトゲノムが初めて解読されて以来、シーケンシングのコストは急速に低下している。10年前は、1人のゲノムを解読するのに5万ドルほどかかっていた。現在では、最大規模のシーケンシング施設で600ドル程度にまで低下した(コストの大部分は薬品代である)。
さらなる低コストを実現するために、BGIの新システムでは、ロボットアームと大量の薬液槽、そしてイメージング装置を使用している。今年中には、大規模な遺伝子マッピングやハイスループット遺伝子スクリーニングを行なうがん研究所に、カスタマイズされた形で提供される予定だ。
「低コストな新システムは、100万人単位の人々の遺伝子を対象とする、大規模な遺伝子研究で優先的に使われていくでしょう」。今回の新技術を開発した、BGIグループ傘下のコンプリート・ゲノミクス(Complete Genomics、カリフォルニア州サンノゼ)の最高科学責任者、ラドイェ・ドルマナック博士はそう語る。
中国との争い
BGIは20年前、中国が「ヒトゲノム計画」に参加している最中に設立された。以降、BGIグループは、パンダや稲植物のDNAを解読する研究所から、動物のクローニングや健康検査、委託研究などを幅広く手掛ける複合企業へと変貌した。
BGIは、「DNBSEQ-TX」と呼ばれる今回のシステムの顧客をまだ発表していない。しかし、100ドルというコストの発表は、2012年にコンプリート・ゲノミクスの買収を中国企業に許したことで、米国が技術的優位性を失ったのではないかという懸 …