何度も聞いた話だが、民主主義は不完全なシステムだ。それでも、私たちはどうにかしてきた。ここで伝えたいメッセージは、長い間懸命に考えてきたことで、民主主義はこれ以上どうにもできないのではないか、ということだ。私たちが取り組んでいる問題は、民主主義では解決できない。したがって、結論として、民主主義を成長させなければいけないのだ。民主主義を成長させる魔法のレシピは提供できまないが(そんなレシピがあったらいいが)、みなさんの頭を刺激するいくつかの考えを述べたい。
米国政治に欠如しているのは、尊敬でき、党派主義に陥らない、学際的チームだろう。そうしたチームがあれば、何ができるか提示してくれるはずだ。また、さまざまな解決策のプラス面とマイナス面も示せるだろう。エネルギー問題を取りあげてみよう。全米アカデミーズや適切な人物と協議し合うその他の機関と共に、次のように発言できるチームが設立されたら最高だ。
「たくさんの提案がありますが、大部分はうまくいきません。ですが、ここに6つの計画があります。どれも実行可能です。それぞれの計画について、費用とよい面、悪い面、危険度、不確実性を説明します」
少なくとも、それぞれの選択肢は、十分に整合性があり、よく練られた計画だろう。しかし、連邦議会の各委員会がそれぞれの計画をつまみ食いし、計画をまとめるような民主主義は信頼できない。議会が飛行機を設計するとしよう。それぞれの委員会が担当部分を設計し、11時間かけて両院協議会が部品をどうまとめるか決める。果たしてその飛行機は飛ぶだろうか? エネルギー計画やインフレ計画などが、この方法でまとめられているのだ。
米国の議会制民主主義はうまくいっていない。現行の制度は、建国当時の社会が複雑でなかった時代に設計されたのだ。ジェファーソン流の民主主義は1980年にうまくいかないと確信できる。世界はあまりに複雑だ。民主主義の廃止を訴えているのではない。そうではなく、救済を訴えているのだ。アメリカの民主主義を救う唯一の方法は、連邦レベルで、根本的な意思決定プロセスを変えることだ。そうすることで、この国が直面している巨大で複雑な諸問題に取る組めるようになる。
ジョン・G・ケメニー著『米民主主義の救済:スリーマイル島の教訓(Saving American Democracy: The Lessons of Three Mile Island)』(Technology Review 1980年6月/7月号)より