アルバート・アインシュタインは「量子もつれ」という奇妙な概念を、「不気味な遠隔作用」としてあざけり、何の関わりも持とうとしなかった。しかし、それから100年経った現在、 アインシュタインの怖がるお化けが、インターネットの最大の欠点のいくつかを解決できるかもしれない。利用するのは、光ファイバーケーブルの両端でノードをもつれさせることによって超セキュアなネットワークを構築するという、これまででもっとも信頼できる技術である。
量子物理学において、観測される対象物は複数の量子状態の重ね合わせとして表現される。生きていると同時に死んでいる「シュレーディンガーの猫」のようなものだ。量子もつれによって状態の重ね合わせを別の対象物と共有すると、理論的には、両者は離れていても接続を維持するため、どれだけ遠くに離れていても一方を測定すると他方の状態が明らかになる。
量子もつれは量子物理学者だけの関心事ではない。量子インターネットにより、機密メッセージの超セキュアな通信が可能となる。量子インターネットで使われる1つの手法に、一対のデジタル鍵を暗号化する「量子鍵配送(QKD)」として知られるテクノロジーがある。2人がこれらの鍵を持っていれば盗聴を恐れずに話すことができる。第三者が暗号鍵を盗聴しようとすると量子状態が変わってしまうので、盗聴したことがばれてしまうからだ。
しかし、量子鍵配送がうまくいくかどうかは、量子暗号化された鍵の状態をいかに測定するかにかかっている。測定値は送信装置と受信装置における状態 …