ドナルド・トランプ次期大統領の政権移行チームが発表した声明や、政権内の重職を埋めていく人物の顔ぶれから判断すれば、気候変動やクリーン・エネルギー研究の将来は暗い。問題は、もし、気候変動に関心のある大金持ちが、トランプ政権で生じる地球規模の課題と政策のズレを埋められるのであれば、そうすべきだろうか?
トランプ政権は米国環境保護庁の弱体化や、クリーン・パワー・プランの廃止を目論んでいる。トランプは、米国航空宇宙局(NASA)による気候科学の研究費用を削減する意向も示している。研究者は、気候変動に関するデータを消滅させないためバックアップを取得中だ。エネルギー省の廃止を訴えたこともある凡庸なリック・ペリー元テキサス州知事が米国エネルギー省長官(従来は超秀才タイプのポストだった)に就任すれば、新エネルギーの研究は気候変動の対策として推進されることはないだろう。
こうした事情によって、一部の科学者は、人類が地球に与える影響を監視するのに誰を頼ればいいのかと困惑している。
サンフランシスコで木曜日に開催された米国地球物理学連合の会議で、米国科学アカデミーのマルシア・マクナト会長は、個人的な支援者が気候変動の研究に資金を供給してくれるかもしれない、と話した。バズフィードによると、マクナト会長は、気候問題を支援するために数十億ドルを集められる人々と話をしたという。
バズフィードの記事は、「ブレイクスルー・エネジー・ベンチャー」ファンドが通常のベンチャーキャピタル企業が出資するにはあまりにリスクが高いエネルギーに関するアイデアに、今後20年間で10億ドルを投資する先週の発表後に掲載された。20人以上の大金持ち(アマゾンのジェフ・ベゾスやアリババのジャック・マー、バージンのリチャード・ブランソン)がファンドへの出資を申し出ている。
当然問題もある。気候変動やエネルギーの研究に資金提供を申し出ることで、大金持ちは単に、個人的な資金提供でこうした研究はまかなえるのだと示したいだけかもしれない。トランプ政権は、喜んでこの申し出を受け入れるだろう。それではだめなのだ。政府は基礎研究に資金を提供する上で重要な役割を果たしており、その役割は政権交代があっても引き継がなければならない。
マクナト会長は同じことを考えているようだ。万が一に備えて資金提供者を確保しておく一方で、マクナト会長の言葉からは大金持ちに対する「近寄るな」というメッセージも読み取れる。マクナト会長は、気候変動の研究資金を削減する言い分を、トランプ政権や議会に与えて欲しくないと述べた。
恐らく、ほとんどの大金持ちは軽はずみな行動を慎む分別がある。米国政府の地球への投資を維持させるためにも、大金持ちはじっとしているべきだ。
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