2018年夏、バークレーにある小さなロボット工学スタートアップ企業に、ある課題が舞い込んだ。倉庫物流テクノロジーの主要提供元であるナップ(Knapp)は、できる限りたくさんの種類の商品のピッキングができる新たな人工知能(AI)を搭載したロボットアームを求めていた。ナップは8週間にわたり、毎週難易度が増していくさまざまな商品、具体的には、不透明な箱、透明な箱、錠剤のパッケージ、靴下などのリストをそのスタートアップ企業に送った。こうした商品は、ナップの顧客が扱う幅広い商品に対応するものだった。リストを受け取ったスタートアップ企業は地元でそれらの商品を買い求め、ロボットアームが商品をグレーの容器から別の容器へと移し替える映像を1週間以内に送り返した。
課題が終わりを迎える頃には、ナップの幹部たちは困り果てていた。彼らは6~7年間にわたって多くのスタートアップ企業に課題を課してきたが成功せず、今回も同じ結果を予想していたのだ。しかし今回のスタートアップ企業が送ってくる映像には毎回、ロボットアームが完璧な正確さと実用化可能な速度ですべての商品を移し替えている様子が映っていた。
「毎回難易度が上がっていくので、次は上手くいかないだろうと予想していました」。オーストリアに本社を置くナップのイノベーション担当副社長を務めるピーター・プフヴァインはそう話す。「ですが重要なのは彼らが成功したことです。すべてが本当にうまくいったのです。これほど質の高いAIはこれまで見たことがありませんでした」。
そのスタートアップ企業は、「コバリアント(Covariant)」という。同社は1月29日、ナップとの取り組みを発表した。すでにコバリアントのアルゴリズムは、ナップの顧客が運営する2カ所の倉庫で稼働するロボットに実装されている。そのうちの1つであるドイツの電子機器サプライヤーであるオベタ(Obeta)では、このロボットアームが昨年9月から現場で実際に稼働している。コバリアントの共同創業者らは、別の産業用ロボティクス大手企業とも契約締結が間近だと話す。
このニュースは、AI主導のロボット工学の状況の変化を示している。こうしたシステムはこれまで、非常に限定された学術的な環境での使用にとどまっていた。だが、コバリアントは、現実世界の複雑さに合わせてシステムを一般化し、倉庫業界に旋風を巻き起こす準備ができているという。
倉庫での作業は2つのカテゴリーに分けられる。ある空間の前から後ろへと箱を動かすような脚を使うものと、商品を取り上げて適切な場所に配置するような手を使うものの2種類だ。ロボットは長い間にわたって倉庫で利用されてきたが、その活用例は主に前者の作業の自動化に限定されてきた。「現在の倉庫では、人が動き回ることはほとんどありません」。コバリアントの共同創業者でCEOのピーター・チェンはそう話す。「決まった場所の間で物を動かすのは、メカトロニクスが非常に得意とするところです」。
しかし手の動きを自動化するのは、適切なハードウェアだけでは不可能だ …
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