「1兆本の植林イニシアティブ(Trillion Tree initiativ)」への参加表明は、世界のエリートたちにとって、世界経済フォーラム(WEF)に参加するための新たな入場料となった。実際、2020年1月のWEFの年次総会であるダボス会議において植林は、野生チンパンジー研究の第一人者であるジェーン・グドール博士とドナルド・トランプ大統領が足並みを揃えることができた珍しい議題だった。
一方、共和党のブルース・ウェスターマン下院議員(アーカンソー州選出)が植林の国家目標を設定する法案「1兆本植林法(Trillion Trees Act)」に取り組んでいることが1月21日、Webメディアのアクシオス(Axios)に掲載された(文字通りの1兆本の植林が実現されないであろうことは明らかで、ほぼ確実に不可能だ)。
植林に注目が集まっているのは素晴らしいことだ。各国はできるだけ多くの樹木を植えて保護することで、大気から二酸化炭素を吸収し、動物に生息地を提供し、脆弱な生態系を回復する必要がある。
米ローレンス・リバモア国立研究所で二酸化炭素除去研究プログラムの「カーボン・イニシアティブ(Carbon Initiative)」を率いるロジャー・エインズ博士は、「植林は目に見えやすく、社会的に取り組みやすい有力な解決策です」と語る。
しかし、植林は気候変動に対処するという観点からは、信頼性が低く、効果が限定的な手段でもある。森林再生の取り組みのこれまでの実績はひどいものだ。何十年もかけて膨大な数の樹木を植えて保護しても、世界的な二酸化炭素排出量のほんの一部を相殺できるに過ぎない。干ばつ、山火事、病気、または他の地域での森林伐採によって、長年の努力が無駄になる可能性もある。
最大のリスクはおそらく、植林という言葉が醸し出す自然な響きに惑わされ、私たちが実際よりも有意義な行動を取っていると思い込んでしまう点にある。アリゾナ州立大学未来社会イノベーション学部の非常勤職員、ジェーン・フリーガルは、温室効果ガスがそもそも大気中に排出されるのを防ぐために必要な抜本的な変革の「代替策として植林がとらえられてしまう事態を招きます」と言う。
気候変動との戦いにおいて植林が果たせる役割をしっかり考えると、考慮すべき問題がいくつかある。
時間
旅行予約アプリ「ホッパー(Hopper)」が先日、ユーザーが同サービスでフライトを1本予約するごとに、4本の樹木を植える資金を寄付すると発表した。
ホッパーは、1本の樹木が隔離できる平均的な二酸化炭素の量は1トン弱であり、同アプリで購入する平均的なフライト1本における乗客1人あたりの二酸化炭素排出量とほぼ同じだと推定している。ただし問題は、樹木の成長に約40年かかることだ。同社は4本の樹木の種の多様性や、気候条件、その他の要因を考えると、各フライトから排出される二酸化炭素の量を相殺するには一般に約25年かかると見積もっている。
問題は、このようなカーボン・オフセット・プログラム(炭素相殺)がカーボン・ニュートラル(炭素中立)に直結する取り組みであると誤解を招くことだ。現在、排出量を急減する …