英国は、3人の実の親を持つ赤ちゃんを作ることになる不妊治療を承認する最初の国になった。承認により、稀な遺伝的欠陥のある女性が早ければ2017年後半に母親になれるはずだ。
英国政府の英ヒト受精・胚機構(HFEA)によると、英国内の診療所は今後、異論もあるミトコンドリア補充療法の免許申請が認められる。ミトコンドリア補充療法では、欠陥ミトコンドリアがある卵子または受精した胚から採取した核を健康な提供者の卵子に交換する必要がある。
この決定を受け、ニューキャッスル・ファーテリティー・センターは、発表から24時間以内に免許を申請する予定だと述べた。ニューキャッスル大学のチームは、ミトコンドリア補充療法により年間25人までの患者を治療したいという。
ミトコンドリアは、細胞のエネルギー生産機能を担う。ミトコンドリアにはわずかな遺伝情報しかないが、母親の卵子のミトコンドリア(男性のミトコンドリアは子どもに遺伝しない)に起きる稀な突然変異は、子どもが十分なエネルギーを生み出さない細胞を持って生まれる原因となり、多くの場合、致命的な結果につながる。
多くの医師が治療法を求めて何年も研究を重ね、ミトコンドリア補充療法とは別の手法で1990年代後半から2000年代初めにかけて「三つ親」赤ちゃんが生まれた。しかし「細胞質移植」法は、先天異常を引き起こす懸念があり、米国食品医薬品局(FDA)は、全米の診療機関に対して、細胞質移植の中止を指導した。ただし、最近、米議会は、難病を回避する意図があるとしても、胚の遺伝子組み換えを許す気はないことを明らかにした。
細胞の核を提供者の卵子と交換した胚には、2人の女性と1人の男性の遺伝情報を含むことになり「遺伝子組み換えされた人」(ここが議論になる)が誕生する。しかし、提供者のDNAはミトコンドリアとしてしか存在せず、生まれてくる人の外見や性格のような特徴は、実の両親を受け継ぎ、影響しない。
今年初め、ミトコンドリア補充療法で男の赤ちゃんが誕生した。赤ちゃんが生まれたのは米国だが、治療そのものは胚の遺伝子組み換えに関する法規制がないメキシコで実施された。ミトコンドリア補充療法を正式承認することで、英国当局は治療法を厳しく規制でき、生まれた子どもの発育を見守れる。
(関連記事:The Guardian, New Scientist, “DNA操作で「三つ親」 赤ちゃん、メキシコで誕生,” “米デザイナーベビー規制 ミトコンドリア病治療も禁止”)