当時大学1年生だったジャスミン・サンはある朝、母親からメッセージを受け取った。「授業はどうしたの? どうしてまだ寮にいるの?」
シアトル在住のジャスミンの母、ジョアン・チェンは、居場所共有サービス「ライフ360(Life360)」の画面に表示されるジャスミンのカーソルが、まだスタンフォード大学の寮にあることに気づいたのだ。ライフ360は、家族がお互いの居場所をチェックするためのサービスだ。多くの大学生と同様に、ジャスミンはその日、寝過ごして講義に出ていなかった。母親にはあまり知られたくない事実だった。
「母はライフ360を気に入っていました」。現在、学期を過ごしているオックスフォード大学の寮で、当時を振り返りながらジャスミンは低い声で言った。「けれど私には、共有したい情報を選ぶことができませんでした」。
ジャスミンの家族はいま、知りたいことを知りたいときに共有する方法を手にいれている。オックスフォードへの冬季留学を控えていた11月、ジャスミンは、母とまだ家にいる10代の妹に、発表されたばかりのあるアプリをダウンロードするようやんわりと勧めた。元フェイスブック従業員のアレックス・コーネルとサチン・モンガが開発した「コクーン(Cocoon)」と呼ばれるアプリだ。
https://www.youtube.com/watch?v=IjZURFLIglk
説明だけを読めばコクーンはフェイスブックによく似ている。どちらもバーチャル空間で人々がつながるというものだ。違いは、コクーンでは、小規模な自分たちだけのグループの中で、家族同士だけがつながるということ。家族からの近況のフィードの更新があると想像してほしい。たとえば兄弟の誰かが出張先にいつ着いたかという知らせや、立って歩き始めた姪っ子の映像、あるいはヨーロッパ各地でバックパッキングをしているいとこの居場所を示すカーソルなどが、スレッド形式のメッセージアプリ上に表示される。これらはどれもグループのメンバー(現在、最大12人まで)以外が見ることはない。
「表示されるのは必ずしも、最高の瞬間をみんなに見せびらかしたり、自分のアイデンティティを取り繕ったり、地位を得ようとしていたりするについてではありません」とモンガは語る。「親しい人たちとだけ同じ空間を共有するのです。そこにネットワークはありません」。
コクーンは、ソーシャルメディアでの交流の仕方を変えようとするアプリの新しい波の1つだ。こうしたアプリは「いいね」やフォロワーを集めたり、オンライン上の人格を必死に作り上げたりすることを勧めない。その代わり、選ばれた少数の人とのつながりを作ることが軸に据えられている。
ケビン・サンが創業したデックス(Dex)のような人間関係管理アプリは、旧来の企業向け顧客関係管理ソフト(CRM)をしばしば活用している。CRMは信頼できて面白味のないエクセルのシートのようなものだ。連絡を取る相手の名前と、その相手に関連する情報、たとえば誕生日やクセ、好きなものなどを記録するのに使われる。
「私も以前、友達関係や個人的な人間関係を管理するためにスプレッドシートを使っていました」と語るのは、デックスのサン創業者だ。デックスはいわば個人向けCRMであり、同社のWebサイトでは「人間関係を築くスーパーパワーをあなたに」と謳われている。
モナル(Monaru)を創業した3人のアイルランド人学生は、大学を卒業して米国に渡り、そこで居場所がないように感じていた。モナルは、会員が誕生日を覚えるためのサポートにバーチャル・コンシェルジュを使い、プレゼントを買ったり親戚に電話をしたりするようリマインダーを送る。共同創業者のパトリック・フィンレーはエクセルを駆使し、大切な人に電話をするよう伝えるリマインダーを作ったが、プライベートと仕事とを絡み合わせるのは「おかしなことだ」と気づいた。そこでモナルの出番となる。料金を支払うと、友達や …