スペースX(SpaceX)の「スターリンク(Starlink)」プロジェクトをはじめとする、いくつかの企業が提案している方式では、世界規模のインターネット接続を提供するのに何万基もの人工衛星が必要とされている。だが実は、そうした巨大コンステレーションは必要ない。そうであれば、巨大コンステレーションが原因で生じるような厄介な問題にも悩まされずに済む。ゲーマーが満足する品質よりわずかに遅い速度(0.5秒程度の遅延)でよいのなら、通常よりずっと高い高度で周回するわずか4基の衛星群で、世界規模のインターネット接続を継続してカバーできることは1980年代の昔から知られている。
だが、高軌道で通信衛星を運用している世界最大手の衛星インターネット・プロバイダーであるヒューズネット(HughesNet)とビアサット(ViaSat)の通信カバー範囲は、世界規模には遠く及ばない。リモート・センシングやナビゲーションなどのサービスを提供しているその他の衛星ネットワークも、世界規模というレベルにはまったく及ばない。なぜだろうか。
当然のことだが、大きな障害はコストだ。人工衛星の軌道をかく乱する要因はいくつもある。大気の自然な抵抗、地球の重力場の摂動、太陽と月の引力の干渉、さらには太陽放射に起因する圧力に至るまでさまざまだ。これらの問題に対処するには、軌道を一貫して安定させるのに必要な膨大な量の推進燃料を人工衛星に搭載しなければならない。燃料の重量は通常、人工衛星の質量の2倍に及ぶ。すなわち、4基の人工衛星で世界規模のインターネットを実現しようとすると、製造、打ち上げ、運用に膨大な費用がかかるのだ。
エアロスペース・コーポレーション(Aerospace Corporation)のエンジニアたちが『ネイチャー・コミュニケーション』誌に掲載した新しい研究では、軌道をかく乱するこの種の力を利用して人工衛星の軌道の維持させるという発想の転換を提案している。もしこの手法がうまくいけば、わずか4基の衛星で世界規模のインターネット接続を継続的にカバーでき、コストもわずかで済むはずだ。
現在、高 …