近年、多くのテクノロジストが解説するようになった量子インターネットは、光子や電子が持つ量子特性を利用して、完璧なセキュリティのメッセージ送信を実現できる夢のネットワークだ。
政府や軍が注目するのは当然だが、契約から金融取引まであらゆる面でセキュリティを確保する必要がある銀行やその他のビジネス用途で関心が高まっている。加えて、量子インターネットへのニーズが高まっている背景として、通信セキュリティを保つために現在使用されている多くの暗号を量子コンピューターがいずれ解読できるようになることが挙げられる。
このような状況で、世界規模の量子インターネットの構築に科学者とエンジニアはどのように取り組むべきかという興味深い問いが提起される。
米ルイジアナ州バトンルージュにあるルイジアナ州立大学のスミート・カトリらの研究チームが一つの答えを導き出した。量子インターネットを構築するさまざまな方法を研究してきた同研究チームは、最も費用対効果の高い方法は「量子もつれ」状態にある光子を地上に連続的に送信できる量子対応の衛星群(コンステレーション)だと主張する。すなわち、量子インターネットは宇宙空間で構築すべきという考えだ。
まず、基本的な知識を少し説明しておこう。量子ネットワークの中心をなすのは「量子もつれ」という量子物理に特有の性質だ。量子もつれとは、2つの量子粒子が非常に離れた距離にあっても、同一存在を共有する現象である。一方の粒子の測定が瞬時に、他方の粒子の測定に影響を及ぼす。アインシュタインはこの現象を「不可解な遠隔作用」と呼んだ。
物理学者は通常、量子もつれを配信する際に、同じ地点で同じ瞬間に生成された光子対を使う。それぞれの光子を別々の場所に送信すると、光子対の間をつなぐ量子もつれを利用した安全な通信が可能になる。
問題は、量子もつれが不安定で、維持が難しいことだ。光子対の片方と環境の間に何らかの相互作用が起こると、どんなに小さな作用であっても光子対の量子もつれ状態が壊れる。実際、物理学者が量子もつれ状態の光子対をそのまま大気中または光ファイバーを通して送信すると、この破壊現象が起こる。光子は大気中またはガラス中の他の原子と相互作用し、量子もつれ状態が破壊されるのだ。この方法で量子もつれを共有できる最大距離は …