国家が仕掛けるサイバー攻撃
2020年は東京五輪と
米大統領選が標的に
この10年間にわたってサイバー攻撃の能力は拡大し続けており、国際関係で優位に立つために国家はハッキング活動を積極的に利用するようになっている。2020年にはロシアをはじめとする国が、東京で開催されるオリンピックや米国大統領選挙に向けて熾烈なサイバー攻撃を仕掛けてくるだろう。 by Patrick Howell O'Neill2020.01.08
世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の全会一致の決定によって、ロシアが再び今後4年間オリンピックに出場禁止とされた時、ロシア政府は即座に怒りと反発する姿勢を見せた。ロシアが今回どのような報復に出るのか、世界は見守っている。
2016年はロシアによる米国大統領選挙への前代未聞の妨害があった年として、歴史に残ることになるだろう。だが、それが明らかになるまで、2016年に起こった最悪のサイバー攻撃はオリンピックを標的としたものだった。ブラジル・リオデジャネイロで開催された夏季オリンピック大会の直前、WADAはロシアが国家レベルでドーピングを企てたことを明らかにし、出場禁止を勧告した。これに対し、勧告を骨抜きにしようとするプロパガンダ活動の一環として、ロシア政府の最も著名なハッカーたちが、複数の国際機関を標的にして本物および改ざんされた書類をリークした。国際オリンピック委員会(IOC)はロシアの全面的な参加禁止を取り下げ、各種目がそれぞれに参加の可否を決定することを許可した。
続く2018年に韓国で開催された冬季オリンピック大会は、従来どおりの楽観的な気分、光り輝くライトと壮麗さで幕を開けた。だがそれに加えて、「オリンピック・デストロイヤー」として知られる、大会のネットワークと機器の妨害を目的とした標的型サイバー攻撃もあった。攻撃の発信源は偽装されており、マルウェアには北朝鮮と中国を指し示す痕跡が残っていた。だが、偽装された中身を捜査官が紐解いてみると、経験豊富なロシア人ハッカーが数人、糸を引いていることが明らかとなった。ハッカーたちは怒りのこもった一連のブログ投稿の中で、「クリーンなスポーツを守るという口実で」、「アングロ・サクソン人の秘密結社」が「スポーツの世界で権力と金」の取り合いをしていると非難した。こうしたロシア人たちは、オリンピックを世界のより大きな権力競争の一部として見ており、好んで使う武器としてハッキングに目を向けていることは明らかだった。しかし、これまでほとんど何もなされておらず、誰も責任を負っていない。
実際、一連の新刊書籍が専門的に説明しているように、サイバー攻撃の能力は拡大しており、古くからの国政術を一変させている。ロシアは、歴史を形作り、地政学的関係を自らの意志に沿ってねじ曲げるためにハッカーを使うことにおいて、米国や中国、イラン、北朝鮮などと並び競っている。
「20年の間に、国際的なデジタル競争の場はかつてないほど攻撃的になっています」。ジョージタウン大学外交政策大学院のベン・ブキャナン教授は、近く刊行予定の著書 …
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