科学の重要な問題でありながら、悲しいことに顧みられていない疑問がある。それは、「ビールの缶を振っても、蓋を開ける前に缶を軽くたたけば泡の噴出を防げるというのは本当か?」という疑問だ。
これが本当だと考えるに足るもっともらしい理論がある。缶を軽くたたくことで、缶の内壁に付着した泡が放出されて表面に浮いて消散するため、蓋を開けた時に泡になりにくいというのだ。本当だろうか?
南デンマーク大学のエリザベータ・ソピーナ博士と同僚らの無私の研究によって、その疑問に対する答えが出た。ソピーナ博士らは初めて、この理論をテストするために、1000缶のラガービールを用いて無作為な比較対照試験をした。その結果は、同博士らにとって幸運なことに、答えの数と同じぐらい多くの質問を提起するものであり、ビールに関するたゆまぬ研究が今後も続くことを確信させるものであった。
最初に基礎的な知識を説明しておこう。ビールは、アルコールと、大麦やホップなどの材料からできるタンパク質を含む水ベースの発酵液体だ。多くの場合、炭酸ガスを高圧で液体中に飽和させており、加圧下で保存される。
缶ビールの蓋を開けてこの圧力を解放すると、液体が保持できる二酸化炭素の量が劇的に減少し、泡が形成される。液体の表面まで上昇した泡はタンパク質によって安定化し、多くのビールに特徴的なクリーム状の泡が上面に形成される。この上面の泡の層は、ビールに独特の味と香りを与える風味の分子を逃がさない働きをする。
しかし、ビールの缶を開ける前に振ってしまった場合は、この泡が問題を起こす。缶を振ることで内部のビールの表面積が増え、二酸化炭素の飽和度が下がり、核生成中心として知られている現象により、液体中の小さな粒子を中心とした小さな泡を形成する。
この泡は、缶の蓋を開けると急速に大きくなり、表面に浮上して泡を形成する。この泡が缶の上部にある空間より大きな体積を占めると、ビールが缶から噴出する。ソピーナ博士らは「これは非効率的です。発泡すると消費できるビールの量が減るので無駄になります」と言う。「さらに、ビールが飛散して衣服や周囲の物体を汚す可能性があるため、不快ですし、社会的にも望ましくない副作用をもたらします」。
毎年1700億リットル以上のビールが消費されていることを考えれば(その多くはデンマークの研究者によって消費されているものと推定される)、この問題の規模は容易に把握できる。「ビールの泡立ちを防ぐ、または少なくとも最小限に抑えることは …