KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
缶ビールを叩くと泡が噴出しないとの噂は本当?1000缶で試した結果
Getty
人間とテクノロジー 無料会員限定
Does tapping the bottom of a beer can really stop it fizzing over?

缶ビールを叩くと泡が噴出しないとの噂は本当?1000缶で試した結果

缶ビールを振ってしまい、蓋を開けたときに中身を噴出させてしまった経験はないだろうか。デンマークの研究者たちが、「ビールの缶を振っても、蓋を開ける前に缶を軽くたたけば泡の噴出を防げる」とする「タッピング理論」の真偽を、1000本の缶ビールを使った試験で確認した。 by Emerging Technology from the arXiv2019.12.13

科学の重要な問題でありながら、悲しいことに顧みられていない疑問がある。それは、「ビールの缶を振っても、蓋を開ける前に缶を軽くたたけば泡の噴出を防げるというのは本当か?」という疑問だ。

これが本当だと考えるに足るもっともらしい理論がある。缶を軽くたたくことで、缶の内壁に付着した泡が放出されて表面に浮いて消散するため、蓋を開けた時に泡になりにくいというのだ。本当だろうか?

南デンマーク大学のエリザベータ・ソピーナ博士と同僚らの無私の研究によって、その疑問に対する答えが出た。ソピーナ博士らは初めて、この理論をテストするために、1000缶のラガービールを用いて無作為な比較対照試験をした。その結果は、同博士らにとって幸運なことに、答えの数と同じぐらい多くの質問を提起するものであり、ビールに関するたゆまぬ研究が今後も続くことを確信させるものであった。

最初に基礎的な知識を説明しておこう。ビールは、アルコールと、大麦やホップなどの材料からできるタンパク質を含む水ベースの発酵液体だ。多くの場合、炭酸ガスを高圧で液体中に飽和させており、加圧下で保存される。

缶ビールの蓋を開けてこの圧力を解放すると、液体が保持できる二酸化炭素の量が劇的に減少し、泡が形成される。液体の表面まで上昇した泡はタンパク質によって安定化し、多くのビールに特徴的なクリーム状の泡が上面に形成される。この上面の泡の層は、ビールに独特の味と香りを与える風味の分子を逃がさない働きをする。

しかし、ビールの缶を開ける前に振ってしまった場合は、この泡が問題を起こす。缶を振ることで内部のビールの表面積が増え、二酸化炭素の飽和度が下がり、核生成中心として知られている現象により、液体中の小さな粒子を中心とした小さな泡を形成する。

この泡は、缶の蓋を開けると急速に大きくなり、表面に浮上して泡を形成する。この泡が缶の上部にある空間より大きな体積を占めると、ビールが缶から噴出する。ソピーナ博士らは「これは非効率的です。発泡すると消費できるビールの量が減るので無駄になります」と言う。「さらに、ビールが飛散して衣服や周囲の物体を汚す可能性があるため、不快ですし、社会的にも望ましくない副作用をもたらします」。

毎年1700億リットル以上のビールが消費されていることを考えれば(その多くはデンマークの研究者によって消費されているものと推定される)、この問題の規模は容易に把握できる。「ビールの泡立ちを防ぐ、または少なくとも最小限に抑えることは …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. AI’s search for more energy is growing more urgent 生成AIの隠れた代償、激増するデータセンターの環境負荷
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る