米国のバラク・オバマ大統領は2016年の大統領選挙に関わるサイバー攻撃の完全な調査を指示した。
調査は米国の情報機関によって実施され、大統領が1月20日に職を去る前に報告される。
時間は限られる。選挙期間中、アリゾナ州やイリノイ州、フロリダ州で投票者登録システムが侵入された。さらに、民主党全国委員会と民主党議会運動委員会のサーバーも、ジョン・ポデスタ(クリントン政権の大統領首席補佐官)とコリン・パウエル(ブッシュ政権の国務長官)の電子メールアカウントも侵入された。
報告書は、完成までのスケジュールが厳しく、情報機関の調査内容をゼロからまとめるというより、各機関が知恵を出し合い、既知の情報を整理することになりそうだ。いずれにせよ、米国国土安全保障省と合衆国国家情報長官がいうとおり「報告書に求められる範囲と内容の扱いにくさから考えて、ロシアの政権幹部を民主党全国委員会のハッキングに関わったと認定するにとどまる」ことになりそうだ。
他の攻撃がどこから仕掛けられたのかは未解明だが、セキュリティ研究者もロシアによる実行の可能性が高いと示している。新報告で、米国国家情報局(NSA)マイケル・S・ロジャース長官が公式に発表したとおり、民主党全国委員会のハッキングは、特定の効果を狙った「国家による意図的な仕業」の一環であるとの仮説を裏付けたとしても驚くにはあたらない。
問題の根は深い。今年初め、セキュリティの専門家であるブルース・シュナイアーは、ワシントンポスト紙に「もし外国政府が責任を追及されずに米国の選挙に干渉できると知れば」、「今回判明した文書の窃取や流出はもちろん、明るみには出ていないさらに巧妙な操作による世論への影響が起こりうる」のだ。
報告書が公表されるは不明だ。しかし、少なくともオバマ大統領と次期大統領は、ハッキングがどう選挙に影響を与えたかの事実を知らされる。リサ・モナコ大統領補佐官(テロ対策・国土安全保障担当)はポリティコに対して述べたとおり、ドナルド・トランプ次期大統領の政治は「サイバー空間で急速に成長する脅威を引き継ぐ」だろう。
報告書は恐らく、アメリカが第45代大統領を選ぶにあたって、外国の力がどう作用したかを記載するはずだ。
(関連記事:Reuters, Politico, “テクノロジーは大統領選挙をどう歪めるか,” “クリントン不支持の世論形成は、ロシアによる選挙干渉,” “米国で採用進むネット選挙はすごく危ない”)