KADOKAWA Technology Review
×
Obama Demands the Facts on Election Hacks

オバマ大統領、任期いっぱいでのロシアによる選挙干渉への調査を指示

報告書は、今年の大統領選のまわりで起きた無数のセキュリティー侵害の後ろにいたのが誰だったのか、調査する。 by Jamie Condliffe2016.12.12

米国のバラク・オバマ大統領は2016年の大統領選挙に関わるサイバー攻撃の完全な調査を指示した。

調査は米国の情報機関によって実施され、大統領が1月20日に職を去る前に報告される。

時間は限られる。選挙期間中、アリゾナ州イリノイ州フロリダ州で投票者登録システムが侵入された。さらに、民主党全国委員会民主党議会運動委員会のサーバーも、ジョン・ポデスタ(クリントン政権の大統領首席補佐官)とコリン・パウエル(ブッシュ政権の国務長官)の電子メールアカウントも侵入された。

報告書は、完成までのスケジュールが厳しく、情報機関の調査内容をゼロからまとめるというより、各機関が知恵を出し合い、既知の情報を整理することになりそうだ。いずれにせよ、米国国土安全保障省と合衆国国家情報長官がいうとおり「報告書に求められる範囲と内容の扱いにくさから考えて、ロシアの政権幹部を民主党全国委員会のハッキングに関わったと認定するにとどまる」ことになりそうだ。

他の攻撃がどこから仕掛けられたのかは未解明だが、セキュリティ研究者もロシアによる実行の可能性が高いと示している。新報告で、米国国家情報局(NSA)マイケル・S・ロジャース長官が公式に発表したとおり、民主党全国委員会のハッキングは、特定の効果を狙った「国家による意図的な仕業」の一環であるとの仮説を裏付けたとしても驚くにはあたらない。

問題の根は深い。今年初め、セキュリティの専門家であるブルース・シュナイアーは、ワシントンポスト紙に「もし外国政府が責任を追及されずに米国の選挙に干渉できると知れば」、「今回判明した文書の窃取や流出はもちろん、明るみには出ていないさらに巧妙な操作による世論への影響が起こりうる」のだ。

報告書が公表されるは不明だ。しかし、少なくともオバマ大統領と次期大統領は、ハッキングがどう選挙に影響を与えたかの事実を知らされる。リサ・モナコ大統領補佐官(テロ対策・国土安全保障担当)はポリティコに対して述べたとおり、ドナルド・トランプ次期大統領の政治は「サイバー空間で急速に成長する脅威を引き継ぐ」だろう。

報告書は恐らく、アメリカが第45代大統領を選ぶにあたって、外国の力がどう作用したかを記載するはずだ。

(関連記事:Reuters, Politico, “テクノロジーは大統領選挙をどう歪めるか,” “クリントン不支持の世論形成は、ロシアによる選挙干渉,” “米国で採用進むネット選挙はすごく危ない”)

人気の記事ランキング
  1. Why handing over total control to AI agents would be a huge mistake 「AIがやりました」 便利すぎるエージェント丸投げが危うい理由
  2. An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
  3. This startup just hit a big milestone for green steel production グリーン鉄鋼、商業化へ前進 ボストン・メタルが1トンの製造に成功
  4. OpenAI has released its first research into how using ChatGPT affects people’s emotional wellbeing チャットGPTとの対話で孤独は深まる? オープンAIとMITが研究
タグ
クレジット Photograph by Alex Wong | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る