災害現場での活躍が期待される自律通り抜け飛行ドローンの研究成果
ドローンを災害現場の遭難救助活動に使うのに欠かせない、隙間の自律通り抜け飛行の研究成果。 by Emerging Technology from the arXiv2016.12.12
マイクロ・エアー・ビークルはいつの日か、地震や津波など、災害後の捜索救助活動に大きく貢献するだろう。クアッドコプターが建物の損害を評価し、割れた壁から侵入し、閉じ込められた人を見つけるために崩壊した建物の空隙を飛び抜ける様子は容易に想像できる。
しかし将来、無人機がこうしたタスクを遂行するには、スピードを出してさまざま角加速度で狭い隙間を通り抜けるよう自律的に飛行し、自機が使える空間を飛び抜け、ひねったり方向を転換したりする必要がある。
いうのは簡単だがやるのは難しい。実際、外部処理装置による相当な支援なしに、こうした処理を実行できるドローンは存在しなかった (“Daredevil Drone Files through the Trees Like an Ace”参照)。
12月9日、チューリッヒ大学(スイス)のダビデ・ファランガ研究員のチームにより、状況は変わりつつある。研究チームは進行方向のカメラから得られる少量のデータと、内蔵ボードの巧みな演算処理により、隙間をすばやく飛び抜ける自律型ドローンを開発した。
研究チームはドローンが確実に隙間を視認できるように、黒で太く縁取りした長方形の枠を作った。さらに枠を部屋の中央に設置し、ドローンが自律飛行で飛び抜けるように訓練した。
ドローンの進行方向側には隙間検知用の魚眼カメラが取り付けられている。タスクを簡単にして必要な軌道を計算するだけで済むように、ドローンにはあらかじめ長方形の大きさが設定されている。
それでも、このタスクは依然として困難だ。機体の内蔵プロセッサーは軌道を2つの段階で計算する。まず、ドローンがどのように隙間を飛び抜けるべきかを計算し、隙間を通過するために必要な特定のひねりや向き、回転を計算する。ドローンは衝突を避けるために長方形の枠からなるべく離れるように軌道を算出する。
通過軌道が決まったら、機体内蔵のプロセッサーはドローンが通過軌道に入れる地点に現在地から移動するための進入路を計算する。
進入軌道には別の制約がある。たとえば、ドローンは自機の位置を特定するために隙間を認識する必要があり、軌道を飛行するとき、常にカメラの視野に枠を捉え続ける必要がある。
プロセッサーは、進路がドローンの空気力学的な性能の範囲に確実に収まるように調整しながら、絶え間なく軌道を再計算(プロセッサーは1秒間に4万回の軌道計算ができるように設計・テストされている)する。
軌道を2段階で扱う理由のひとつは、長方形の枠を通過する際、ドローンは枠を一瞬見失うからだ。とはいえば、目隠し状態の飛行時間は短く、曲芸飛行には十分な時間がある。「衝突のリスクをなるべく減らすように軌道を算出しており、通過にかかる時間は短く、通過時に使えない視覚的なフィードバックはまったく必要としません」と研究チームはいう。
クアッドコプターには距離センサーに加えて、下向きのカメラを取り付けて、隙間を通り抜けたあと、クアッドコプターは姿勢を水平に戻し、ホバリングできるようにしている。
研究チームは、大きさが55×12cm、重さ830gのクアッドローターで手法をテストした。クアッドコプターのモーターは向きの制御力を3倍以上に高めるため、15度の傾きになるように改造されているが、全体の推力は3%しか失われない。
長方形の枠の隙間は80×28cmの大きさがあり、研究チームは、最大傾き45度、最大ピッチ30度で通過する必要があるミッションを35回、最大秒速3mで飛行させた。
結果は興味深い読み物であり、YouTubeで視聴できる。研究チームはクアッドコプターが接触することなしに隙間を通過し、その後にホバリングの状態に移れたら飛行成功とみなしている。
「我々は80%という驚くべき成功率を得た。我々の知る限り、この研究は狭い隙間を積極果敢に飛び抜けることに取り組み、成功を伝える初の研究である」
参照:arxiv.org/abs/1612.00291: 内蔵のセンサーと計算により狭い隙間を飛び抜ける積極果敢なクアッドローター
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