KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
東大、熱を一方向のみに伝えるナノチューブ新素材を開発
Wikimedia commons
人間とテクノロジー 無料会員限定
A nanotube material conducts heat in just one direction

東大、熱を一方向のみに伝えるナノチューブ新素材を開発

東京大学の研究者らがカーボンナノチューブを用いて、ある方向に沿っては熱を伝えるが、その垂直方向にはほとんど熱を伝えない新素材を作り出すことに成功した。コンピューターなどのデバイスの冷却システムを設計・構築する方法に影響を与えそうだ。 by Emerging Technology from the arXiv2020.01.23

電気技術者にとって熱は厄介な存在だ。電子デバイスの信頼性を下げ、完全な誤作動を引き起こすことさえある。だからこそ、コンピューターの部品には放熱グリスが塗りたくられ、放熱管、ファン、さらには水冷システムまでが取り付けられているのだ。

目標は、繊細な部品から熱を集め、環境中に逃がせるようにすることだ。だが、デバイスが小さくなるほどこの課題を解決するのは難しくなる。たとえば、最新のトランジスターはナノメートル単位の大きさしかない。

コストパフォーマンスが最も高い熱伝導体は銅などの金属だ。しかし、熱は金属の中を全ての方向に素早く移動する。つまり、同じ金属と熱的に接触している他の部品にも熱が広がってしまう。

熱をある方向に伝えつつ、それと直交する方向には熱を通さない熱伝導体があれば、より効率的な放熱が可能となるはずだ。この場合、熱はそうした素材に沿って伝わり、横切る方向には伝わらない。

このような非対称性の伝導体があれば、熱設計エンジニアの仕事はずいぶん楽になるはずだ。しかし、そうした素材を作るのは難しい。

東京大学の博士課程に在学中の山口信義と共同研究者たちは、注意深く並べたカーボンナノチューブを使って、まさに前に述べたような形で熱を伝える素材を作り出すことに成功した。この新素材は、熱設計エンジニアがコンピューターなどのデバイスの冷却システムを設計・構築する方法に革命を起こす可能性を秘めている。

まずは基礎的な知識を少し説明しよう。カーボンナノチューブが並外れた性能を持つ伝導体であるということは、材料科学分野の研究者たちの間では有名だ。この微小な管の熱伝導率は、1000 W m-1K-1(ワット毎メートル毎ケルビン)を超える。比較のために挙げると、銅の熱伝導率は約400 W m-1 K-1だ。

だが、材料科学者たちがナノチューブの集合体を作ろうとすると問題が生じる。プラスチックの土台にカーボンナノチューブを乗せ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. AI’s search for more energy is growing more urgent 生成AIの隠れた代償、激増するデータセンターの環境負荷
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る