ルイビル大学の研究者であるジュディス・ダノビッチ博士はある日、息子が家族のアイパッド(iPad)で、シリ(Siri)にあれこれ質問しているのを耳にした。
「ぼくの着ているシャツは何色?」。当時4歳の息子は尋ねた。
息子はシリの知識の限界を試していた——。ダノビッチ博士は言う。彼女の研究によれば、それぐらいの年齢の子どもたちにはよくあることだという。ダノビッチ博士らによる研究が進むにつれ、そうした子どもたちの行動はよりはっきりとしてきた。
2019年5月に公表された研究で、ダノビッチ博士と2人の同僚は「選択的信頼研究」を実施した。5~8歳の中国人の子どもをグループに分け、「火星は太陽の周りを何日で回るのか?」といった質問を投げかけた。
ダノビッチ博士ら研究チームは子どもたちに、「インターネットには600日と書かれていますが、先生は700日と話しています」という異なる情報を物語風にして与えた。子どもたちはどちらを信じたか?(ちなみに正解は687日)。
結局、教師の答えは間違っていたにもかかわらず、子どもたちは圧倒的に教師を信じた。当然のことだ。子どもたちは教師のことをよく知っているし、教師は子どもたちと強い信頼関係を築いてきた …