火で遊ぶことは通常、決しておすすめできることではない。まして地球の約400キロメートル上空の宇宙船内となればなおのことだ。しかし、ISS(国際宇宙ステーション)に搭乗する宇宙飛行士たちは数週間以内に、小型の風洞内で火をつける任務を命じられることになっている。微小重力環境下で火がどのように振る舞い、広がるかを理解するためだ。
地球上では、重力が冷たくて濃い空気を押し下げることで燃焼を助け、対流プロセスを作り出し、燃え上がる炎に新しい酸素を供給する。ただし、重力を計算から外すと、火の振る舞いははるかに予測不可能となる。ISSや他の宇宙船で実際に火災が発生した場合に、閉じ込められ加圧された空間でどのように火が広がるのかを理解する必要がある。
宇宙飛行士が宇宙船内で意図的に火をつけるのは、この実験が初めてのことではない。2008年に米国航空宇宙局(NASA)は、グローブボックスサイズの「燃焼統合ラック(Combustion Integrated Rack)」をISSに送り、微小重力環境下で小さな火を燃やすテストをした。2016年から2017年に実施した「サファイア(SAFFIRE)」と呼ばれる3つのテストでは、無人の「シグナス(Cygnus)」宇宙船に意図的に着火した。同宇宙船はISSへの補給任務をすでに完了し、どのみち地球の大気中で燃焼される予定だった。これらの実験では、微小重力環境下でも安定した炎を得ることは可能で …