奇妙な思考実験を紹介しよう。もつれた量子の粒子のクラウド、つまり、同じ量子存在を共有するクラウドを想像して欲しい。これらの粒子の振る舞いはカオス的だ。この思考実験のゴールは、この一揃いの粒子を介して、量子メッセージを送信することだ。このメッセージはクラウドの一端に向けて送信され、その反対側から抽出されなくてはならない。
実験の最初のステップは、クラウドを真ん中で分割し、左側の粒子を右側の粒子とは別に制御できるようにすることだ。次のステップで、クラウドの左側の部分にメッセージを挿入するが、そこでは、粒子のカオス的な行動により、メッセージは急速にスクランブル化されてしまう。
いったんスクランブル化されたメッセージをもとに戻す方法はあるのだろうか。
カリフォルニア州にあるグーグルのアダム・ブラウン博士と、「弦理論の父」と呼ばれるスタンフォード大学のレナード・サスキンド博士らで構成される研究チームが、その答えを提示している。同博士らは、スクランブル化されたメッセージが驚くべき方法で再現されることを示した。
「次に起こることは驚きです」。メッセージが完全にスクランブル化されたと思われたその時、最初に挿入された場所からはるかに離れた場所で、突然メッセージが非スクランブル化されて元の姿に戻るというのだ。「信号は予期せず再びフォーカスしているのですが、何がレンズの役割を果たしたのかは全く分かりません」とブラウン博士らは述べる。
しかし、博士らのまったくもって風変わりな主張によると、こうした実験が宇宙の最も深い謎の1つである重力と時空の量子的性質の解明に光を投げかけるという。
まず、背景を少し説明しておこう。この思考実験を理解する鍵は、創発現象の性質だ。ブラウン博士らによると、量子システムと通常のシステムは、まったく同じ方法で、創発現象を示せるという。
たとえば、2人の人間が会話をする場合、音波を使用して情報を交換するが、この現象を分子動 …