「弦理論の父」ら、重力と空間の量子的性質の思考実験を提唱
素粒子物理学における「弦理論の父」と呼ばれるスタンフォード大学のレナード・サスキンド博士らが、重力と時空の量子的性質の解明に役立つ可能性のある思考実験を提唱し、研究室における量子重力の実験の実行可能性について考察した。 by Emerging Technology from the arXiv2019.12.18
奇妙な思考実験を紹介しよう。もつれた量子の粒子のクラウド、つまり、同じ量子存在を共有するクラウドを想像して欲しい。これらの粒子の振る舞いはカオス的だ。この思考実験のゴールは、この一揃いの粒子を介して、量子メッセージを送信することだ。このメッセージはクラウドの一端に向けて送信され、その反対側から抽出されなくてはならない。
実験の最初のステップは、クラウドを真ん中で分割し、左側の粒子を右側の粒子とは別に制御できるようにすることだ。次のステップで、クラウドの左側の部分にメッセージを挿入するが、そこでは、粒子のカオス的な行動により、メッセージは急速にスクランブル化されてしまう。
いったんスクランブル化されたメッセージをもとに戻す方法はあるのだろうか。
カリフォルニア州にあるグーグルのアダム・ブラウン博士と、「弦理論の父」と呼ばれるスタンフォード大学のレナード・サスキンド博士らで構成される研究チームが、その答えを提示している。同博士らは、スクランブル化されたメッセージが驚くべき方法で再現されることを示した。
「次に起こることは驚きです」。メッセージが完全にスクランブル化されたと思われたその時、最初に挿入された場所からはるかに離れた場所で、突然メッセージが非スクランブル化されて元の姿に戻るというのだ。「信号は予期せず再びフォーカスしているのですが、何がレンズの役割を果たしたのかは全く分かりません」とブラウン博士らは述べる。
しかし、博士らのまったくもって風変わりな主張によると、こうした実験が宇宙の最も深い謎の1つである重力と時空の量子的性質の解明に光を投げかけるという。
まず、背景を少し説明しておこう。この思考実験を理解する鍵は、創発現象の性質だ。ブラウン博士らによると、量子システムと通常のシステムは、まったく同じ方法で、創発現象を示せるという。
たとえば、2人の人間が会話をする場合、音波を使用して情報を交換するが、この現象を分子動 …
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