太陽嵐が地球磁場にぶつかる「音」、ESAが公開
欧州宇宙機関(ESA)は、太陽嵐が地球の磁場と衝突した際に生まれる振動の録音を公開した。この奇妙な新しい音は、太陽嵐が地球の磁場と相互作用するプロセスの複雑性を浮き彫りにしており、今後の宇宙天気による脅威を予測する方法を見直す必要があるかもしれない。 by Neel V. Patel2019.11.26
地球の磁場は「歌っている」。欧州宇宙機関(ESA)は、太陽嵐が地球の磁場と衝突した際に生まれる振動の録音を、11月19日にジオフィジカル・リサーリ・レターズ(Geophysical Research Letters)に掲載された最新の研究結果と共に公開した。
太陽嵐は、電荷を帯びた粒子が太陽から爆発的に放出されて発生する。この粒子が地球に到達すると、地球の磁場と接触する。磁場の中で最初に当たる領域を「フォアショック」と呼ぶ。荷電粒子とフォアショックの相互作用により、複雑な磁波が生まれる。
ESAのクラスターミッション(厳密にいえばクラスターIIミッション。最初のクラスターミッションは打ち上げに失敗した)では、磁波が高い周波数でまき散らす振動が録音された。科学者たちはこの振動を音響信号に変換し、以下で聴けるような薄気味の悪い音を作り上げた。フォアショックに太陽からの粒子が衝突しなければ、磁波は単一の周波数で振動し、まったく異なる甘美な「歌」になっただろう。https://www.youtube.com/watch?v=zXeGF29GHws
クラスターは地球の磁気圏で太陽風との相互作用を調査する4基の人工衛星で構成され、2000年に打ち上げられた。人工衛星は定期的にフォアショックに突入しており、今回の研究結果と録音は、2001年から2005年に観測した6つの太陽嵐の衝突の際に収集されたデータの解析により得られた。
地球の磁場は、周回軌道上および地球上の多くの機器や電力網を破壊する可能性のある有害な太陽活動を、地球の最前線で防御している。最新の研究論文の著者たちは、フォアショックのコンピューター・シミュレーション・モデル「ブラジエイター(Vlasiator)」を使用して、フォアショックの中で起こる変化によって、太陽嵐の相互作用で生成されたエネルギーがどのように地球に伝播するかを示した。
結論としては、フォアショックで観測された擾乱は研究チームが予想していたよりもはるかに複雑であり、今後の宇宙天気による脅威を予測する方法を見直す必要があるかもしれない。例によって、私たちにはより良いデータが必要だ。この不気味な音は、変わったサウンドトラックというより、こうしたプロセスを研究するためにもっと多くのことをしなければならないという差し迫った警鐘であると言える。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。