生体分子の「波」としてのふるまいを初めて測定=ウィーン大学
量子力学では、すべての物質は波と粒子の両方の性質を備えるが、巨視的な物質では波としての性質を測定することは難しい。ウィーン大学の研究者らは、生体分子が示す波としての性質を実証する自己干渉パターンの測定に初めて成功した。この実証実験は量子生物学の新時代に道を開くものとなるだろう。 by Emerging Technology from the arXiv2019.11.21
量子力学では、物体は粒子のようにふるまうと同時に、波のようにもふるまう。この不可思議な現象は粒子と波動の二重性と呼ばれ、量子力学で最も難解な概念の1つだ。
これまで、電子や光子などの単一粒子が波のように自己干渉することは多数の実験で示されてきた。中でも有名なのは、粒子が2本のスリットを同時に通過する二重スリット実験だ。
あらゆる物体は本質的に量子であるため、すべての物体は波長を持つ。したがって、原理的には、十分に感度の高い実験をすれば、巨視的な物体も同様の粒子と波動の二重性を示すはずだ。
物理学者は、非常に大きな物体の波としての性質を測定する方法をまだ考え出していないが、この分野への関心は着実に高まっている。1999年にはフラーレン分子で粒子と波動の二重性が実証された。それ以降、さまざまな研究グループによってフラーレン分子より大きな分子での実証実験がなされてきた。
これらの実験から、どれくらい大きな分子まで実証可能かという興味深い疑問が提起される。たとえば、生体分子の量子特性を測定できるのだろうか。
ウィーン大学(オーストリア)のアーミン・シャエギ博士らの研究チームは、15個のアミノ酸で構成される天然抗生物質であるグラミシジン分子の量子干渉を初めて実証した。この研究は、生体分子の量子特性を研究する道を開き、酵素、デオキシリボ核酸(DNA)、そしておそらく将来的にはウイルスなどの単純な生命体の量子性質を探る …
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