バクテリアが情報をつなぐ「バイオIoT」を提唱する新研究
生命の再定義

The scientists who are creating a bio-internet of things バクテリアが情報をつなぐ「バイオIoT」を提唱する新研究

世界中のあらゆるモノがインターネットに接続する中、バクテリアを使った新たなIoTの実現可能性が浮上している。バクテリアは優秀な情報伝達デバイスになる一方で、生物ならではの問題点も残している。 by Emerging Technology from the arXiv2019.12.10

IoTに使う理想的なデバイスを設計するとしよう。どのような機能が必須だろうか?まず、他のデバイスや、デバイスを使う人間と通信できなくてはならない。情報を保管・処理する機能も必須だろう。自身の環境をモニタリングするセンサーも欠かせない。最後に、内蔵モーターのようなものも必要だろう。

このようなIoTに理想的な機能を多く備えたデバイスは巷にあふれている。その大部分は、ラズベリーパイ(Raspberry Pi)やアルディーノ(Arduino)ボードなど、広く入手できる低コストなデバイスをベースにしている。

だが、同様の機能を持つ機械セットは他にも豊富に存在すると述べるのが、ロンドン大学クイーンメアリー校に在籍中の博士課程生ラフェエル・キムと、ステファン・ポスラド博士だ。2人はバクテリアに着目した。バクテリアは効果的な通信が可能で、エンジンやセンサーを内蔵しており、さらに強力な情報の保管・処理構造も持つと指摘する。

バクテリアのこうした特徴から興味深い可能性が浮上すると指摘する。バクテリアを使って生物学的なIoTを作ってみるのはどうだろうか? 2人は現在、行動を喚起するためにバイオIoTを実現できる可能性のあるアイデアや技術をいくつか提示している。

バクテリアが情報を保管・処理する方法は新たな研究領域であり、研究の大部分は働き者のバクテリアである大腸菌に注目している。これらの(そして他の)バクテリアは、「プラスミド」という環状のDNA構造の中に情報を蓄える。そして「接合」という過程で、プラスミドをある個体から別の個体へと送る。

 

昨年、当時イタリアのパドヴァ大学の修士課程に在学していたフェデリコ・タべラのチームが、非運動性の大腸菌が運動性のバクテリアに「Hello world」というシンプルなメッセージを送る回路を構築した。この運動性のバクテリアは、受け取ったメッセージ情報を別の場所に送った。

このような情報伝達はバクテリアの世界では常時起きており、高度に複雑なネッ …

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