18世紀における科学的に重要な課題は、船乗りたちが海で自分たちの現在位置を把握する方法を見い出すことであった。そうした中で、最もうまくいった方法の1つは、空で固定している恒星を背景にして月の位置を測定することだった。
視差効果のせいで、恒星に対する月の位置は観測者の居場所によって変わる。したがって、測定した月の位置を、イギリスにあるグリニッジ天文台の観測者用に計算した位置の表と比較すれば、船乗りたちは自分が現在いる経度を決められる。
ただし、問題が1つあった。月の位置を事前に計算するのは、思われている以上に難しいのだ。小さいながらも、太陽が月に対してかなりの引力を及ぼしているからだ。この事実により、地球、月、太陽の運動は三体問題となり、多くの数学者が長い間手を焼いている。
厄介なのは、この種の三体の動きが、数少ない特殊な場合を除いてはすべて混沌としていることだ。将来の正確な位置を計算する簡単な方法は存在しない。このことが原因で、月を基にした航行表に誤差が発生し、不正確な位置予測が船乗りたちに致命的な結果をもたらす場合もあった。
それでも、高精度な時計であるクロノメーターが安価で正確になり、船上で広く使用されるようになる19世紀半ばまでは、船乗りたちは欠陥のあるこの手法を最大限に活用していた。それでも最終的には、ジョン・ハリソンが初めて製作したことで知られるクロノメーターを用いる方法が、経度を計算するのに好まれるようになった。
しかしながら、三体問題は依然として数学者を悩ませ続けている。最近の課題は、球状星団や銀河核の構造を決定することだ。こうした構造は、ブラックホール連星系が単一のブラックホールと相互作用する様子で変わってくる …