9月下旬、グーグルが「量子超越性」を達成したようだ、というニュースが駆け巡った。その内容は、従来のコンピューターでは実行不可能なほど長い時間がかかる計算を、量子コンピューターで実行したというものだった。計算自体は基本的に乱数を出力するための極めて限定的な技術だったが、ライト兄弟の12秒間の初飛行と同じくらいの有用性と重要性を持つ画期的な出来事であり、まったく新しいコンピューティング時代の幕開けを告げるものだ。
だが、10月21日付けのブログで、IBMはグーグルの主張に異を唱えている。世界最速の従来型スーパーコンピューターで1万年かかる可能性があるとグーグルが主張するタスクは、実際には数日で終えられるというのだ。
「量子超越性」という言葉を生み出したカリフォルニア工科大学の物理学者ジョン・プレスキル教授がクアンタ(Quanta)誌の記事で述べたとおり、グーグルは量子コンピューターにとって有利で、かつ従来型コンピューターには不利な、極めて限定されたタスクを特に選んでいる。「この量子計算は非常に小さな構造しか持ちません。従来のコンピューターではとても時間がかかるものの、得られる答えはあまり有益なものではない、ということです」(プレスキル教授)。
グーグルの研究論文はまだ発表されていないが(日本版編注:その後、10月23日付のネイチャー誌で発表された)、先月、草稿がネット上にリークされた。それによれば、グーグルの研究チームは53量子ビット(キュービット)のマ …