遺伝子編集ツールのクリスパー(CRISPR)は高く評価されているが、実際にはCRISPRはゲノムにとって過酷なツールでもある。CRISPRは、DNA二重らせんを切断するハサミであり、「編集」と呼ばれるものは、実際には細胞による迅速な修復の試みである。修復の試みではエラーが誘引される。この予測不可能な変更を、一種の「ゲノム破壊行為」とさえ呼ぶ批評家もいる。
そのため、研究者はCRISPRの名声にたがわない、真の意味での遺伝子の検索・置換機能を実現する方法を模索してきた。ハーバード大学の生物学者であるデイヴィッド・リウ教授の言葉を借りれば、ゲノム・エンジニアの究極の願いは、「どんな生体細胞または有機体のゲノムでも、実質的に、標的とするあらゆる遺伝子改変を実行できる能力」だ。
リウ教授は10月21日、CRISPRテクノロジーの最新の(そしておそらく最も重要な)改良として、「プライム編集」のアイデアを発表した。同教授の説明では、プライム編集はCRISPRのように実際にDNA鎖を切断することなく、あらゆるタイプの遺伝的エラーを書き換えられる分子ツールである。
リウ教授と他10人の研究者が10月21日にネイチャー(Nature)誌に発表したレポートによると、この新しいテクノロジーは人工タンパク質を使用して、DNA塩基配列の1文字を他の文字に変換したり、より長い文字列を追加または削除したりできる。リウ教授は実際、遺伝性疾患を引き起こす既知の7万5000種の突然変異をすべて修復できると主張している。
第1世代のCRISPRは、ほとんどの場合、遺伝子を無効化するために利用される。DNAを削除することが必要とされる疾患の一部の研究に役立ち、治療にも役立つ可能性がある。より広範な遺伝子置換も可能だが、制御が難しい。
第1世代のCRISPRよりも幅広い編集メニューをより精巧に実現する新しいCRISPRテクノロジーである「プライム編集」には、すでに莫大な金額に値する価値がある。ニューパス(Newpath)やグーグルのベンチャー部門であるFプライム(F-Prime)・キャピタル・パートナーズなどで構成される企業投資家連合は、今回の論文が発表される前からプライム・メディスン(Prime Medicine)という名前の会社を設立し、リウ教授の研究室があるブロード研究所から諸権利を購入済みだ。
プライム・メディスンは設立されたばかりで、オフィスもなければ、従業員もいない。したがっ …