何年もの間、影響力のある世界中の中央銀行が、デジタル通貨を研究していると主張してきた。そして、そのほとんどが、いつか独自のデジタル通貨を発行する可能性を残してきた。その日は、予想しているよりもずっと早く訪れるかもしれない。
国際通貨基金(IMF)のエコノミストであるトバアス・エイドリアン博士とトマス・マンチーニ・グリフォリー博士は、最近投稿したブログの中で、ステーブルコイン(安定通貨)と呼ばれるデジタル通貨がもたらす「顕著なリスク」に対処するため、政治家に「迅速な規制措置」を取るように求めている。ステーブルコインは民間が発行するデジタル通貨で、一定の価値を維持するように設計されている。端的に言えば、中央銀行がステーブルコイン事業に自ら参入する必要があるかもしれない、ということだ。
2019年のはじめまで、国家の支援を受けたデジタル通貨がすぐに登場する可能性は非常に低いとみられていた。中央銀行の中央銀行と呼ばれる国際決算銀行(BIS)のアグスティン・カルステンス総支配人は、3月のスピーチでは決して乗り気ではなかった。「これまでの研究や実験で、説得力のある事例は提示できていません。現時点で、未知の領域に足を踏み入れるだけの価値を中央銀行は見出してはいないのです」。
だが、7月になると、カルステンス総支配人の態度は一変した。「デジタル通貨市場は私たちが考えているよりも早く一般化し、中央銀行のデジタル通貨を市場に提供できるようにする必要があるのかもしれません」とカルステンス総支配人はフィナンシャル・タイムズ紙に語っている。
何が変わったのだろうか。6月、フェイスブックが新しいステーブルコイン「リブラ(Libra)」の発行計画を明らかにした。リブラは、主権通貨(各国政府発行通貨)で構成された準備金によって価値が裏付けられるステーブルコインだ。フェイスブック …