パリやメキシコシティーがディーゼル車の市内乗り入れを2025年までに規制へ
新規制は、大気汚染を改善し、電気自動車の普及につながる。 by Jamie Condliffe2016.12.05
パリやマドリッド、アテネ、メキシコ・シティーは、2025年までに、ディーゼル・エンジンを搭載した自動車とトラックの市内への乗り入れ禁止を決定した。4市は空気の汚れがよく話題になるが、10年以内に空気を思い切り吸い込めそうだ。
ガーディアン紙によれば、C40サミット(世界大都市気候先導グループ、気候変動にともに挑むことを誓った40都市の国際ネットワーク)の声明で、大気汚染を軽減する取り組みとして、都市中心部におけるディーゼル車の使用に関連して発表された。パリ市のアンヌ・イダルゴ市長は、この政策は4市が「大気汚染やそれによって引き起こされる健康被害と人々の死を、これ以上は受け入れない」ことを示しているという。
ディーゼル車は米国ではそれほど普及していないが、ヨーロッパの道路でディーゼル車が数多く走っているのは、ガソリン車よりも燃費がよく、ヨーロッパ諸国の燃料価格は米国よりかなり高いのが原因だ。米国でディーゼルとガソリンの価格はそれぞれ1リットル当り60セントと64セントだが、フランスでは1.3ドルと1.5ドルもするのだ。
ディーゼル車は燃費でも価格でも優れている反面、ディーゼル・エンジンは燃焼時にガソリン・エンジンより多くのすすと窒素酸化物を排出する。また最近の研究によれば、毎年世界中で亡くなる300万人以上の原因に、ディーゼル・エンジン由来の排出物が関わっている。
しかし、ディーゼル車をクリーンにする努力は報われていない。フォルクスワーゲンの「クリーン・ディーゼル」車が実際にはクリーンではなかった事実の発覚は記憶に新しい。パリ、マドリッド、アテネ、メキシコ・シティーの手法は、もっと単純にディーゼル・エンジンの使用禁止によって、問題に対処しようとしている。だが、都市のどの地域で規制するか、どんな段階を経て規制を導入するか、といった具体的な点は声明では明らかにされておらず、実施内容は不明な状態だ。
大気汚染対策が動機の政策ではあるが、ディーゼル車の規制は気候変動対策にもよい影響がありそうだ。メキシコ・シティーのミゲル・アンヘル・マンセラ市長は、規制が公共交通機関の整備を促進させるよい機会と考えており、アテネ市のギョルゴス・カムニス市長は、自動車の都市への乗り入れを一切禁止にする長期的計画の一部と見ているようだ。
規制は、電気自動車の採用促進を後押しするだろう。MIT Technology Reviewが以前から伝えてきたように、持続可能なエネルギーの利用には、この種の大胆な規制が必要なのだ。
(関連記事:Guardian, “Global Air Pollution Is Getting Worse, but Removing It Could Worsen Climate Change,” “What the VW Scandal Means for Clean Diesel,” “ガソリン車と電気自動車の主役交代は2020年代後半”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。