人類のプラスチック依存は深刻な問題だ。プラスチックは石油を原料とする材料で、そのほとんどが埋め立て地や焼却炉で一生を終える。どちらにせよ、持続不可能だ。それなら、もっと環境に優しい、生物由来の素材を複合したバイオコンポジット(生物複合材料)を開発したらどうだろう?
バイオコンポジットの開発は、口で言うほど簡単なことではない。ほとんどの生分解性プラスチックは、石油に由来する格子状のマトリックス構造に頼り切っている。一般的に、生物が持つマトリックス構造には、大半の工学的および構造的な用途に耐えられる強度がないからだ。
そこで次に出てくるのが、天然木材だ。天然木材は、加工することで鋼やセラミックに匹敵する材質に変えることができる。しかし、その加工処理は有害な化学物質の使用を伴うので、環境に優しいものではない。
こうした背景から、持続可能で、加工木材や石油由来のプラスチックと同等の機械的性質を持つバイオコンポジットを、ごく一般的な植物から作り出す研究に大きな関心が集まっている。
この研究に取り組んだのは、カリフォルニア工科大学のエレフセリア・ルーメリ博士研究員の研究チームだ。ルーメリの研究チームは、植物のタバコの細胞を、木材のような機械的性質を持つ非常に頑丈な材料に変える方法を発見した。「私たちは、植物細胞を使って、天然のバイオコンポジットを作る新しい方法を開発しました」とルーメリの研究チームは述べる。「この天然バイオコンポジットの剛性と強度は、ポリスチレンや低密度ポリエチレンなど、密度が類似した市販のプラスチックを上回ります。さらに、完全に生分解性があります」。
製造方法は単純で分かりやすい。ルーメリの研究チームはまず、ナス科タバコ属の植物であるタバコ(学名:Nicotiana tabacum)の細胞を、研究室の懸濁液で培養する。タバコは、葉が嗜好用の煙草に加工 …