KADOKAWA Technology Review
×
始めるならこの春から!年間サブスク20%オフのお得な【春割】実施中
頑丈さはプラスチック並み、環境に優しいタバコ由来の新素材
Alex Plesovskich | Unsplash
人間とテクノロジー Insider Online限定
A material derived from tobacco is as strong as wood or plastics

頑丈さはプラスチック並み、環境に優しいタバコ由来の新素材

タバコの細胞から、耐用年数を過ぎた後に自然に分解される新素材が開発された。石油を使わずにプラスチック並みの強度を持つ、持続可能なバイオコンポジットに注目が集まる。 by Emerging Technology from the arXiv2019.10.02

人類のプラスチック依存は深刻な問題だ。プラスチックは石油を原料とする材料で、そのほとんどが埋め立て地や焼却炉で一生を終える。どちらにせよ、持続不可能だ。それなら、もっと環境に優しい、生物由来の素材を複合したバイオコンポジット(生物複合材料)を開発したらどうだろう?

バイオコンポジットの開発は、口で言うほど簡単なことではない。ほとんどの生分解性プラスチックは、石油に由来する格子状のマトリックス構造に頼り切っている。一般的に、生物が持つマトリックス構造には、大半の工学的および構造的な用途に耐えられる強度がないからだ。

そこで次に出てくるのが、天然木材だ。天然木材は、加工することで鋼やセラミックに匹敵する材質に変えることができる。しかし、その加工処理は有害な化学物質の使用を伴うので、環境に優しいものではない。

こうした背景から、持続可能で、加工木材や石油由来のプラスチックと同等の機械的性質を持つバイオコンポジットを、ごく一般的な植物から作り出す研究に大きな関心が集まっている。

この研究に取り組んだのは、カリフォルニア工科大学のエレフセリア・ルーメリ博士研究員の研究チームだ。ルーメリの研究チームは、植物のタバコの細胞を、木材のような機械的性質を持つ非常に頑丈な材料に変える方法を発見した。「私たちは、植物細胞を使って、天然のバイオコンポジットを作る新しい方法を開発しました」とルーメリの研究チームは述べる。「この天然バイオコンポジットの剛性と強度は、ポリスチレンや低密度ポリエチレンなど、密度が類似した市販のプラスチックを上回ります。さらに、完全に生分解性があります」。

製造方法は単純で分かりやすい。ルーメリの研究チームはまず、ナス科タバコ属の植物であるタバコ(学名:Nicotiana tabacum)の細胞を、研究室の懸濁液で培養する。タバコは、葉が嗜好用の煙草に加工 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  2. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #32 Plus 中国AIをテーマに、MITTR「生成AI革命4」開催のご案内
  3. This Texas chemical plant could get its own nuclear reactors 化学工場に小型原子炉、ダウ・ケミカルらが初の敷地内設置を申請
  4. How 3D printing could make better cooling systems 3Dプリントで製造の制約を解放、高効率な熱交換器が設計可能に
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る