マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、カーボンナノチューブ(壁面の厚さが炭素原子1個分の円筒構造体)を使った世界最先端のチップを発表した。従来のソフトウェア・プログラムを実行できるこの新しいマイクロプロセッサーの開発は、シリコンの代替品を探求する上での重要な節目となる可能性がある。
エレクトロニクス産業は、ムーアの法則の減速の問題に苦闘している。ムーアの法則とは、シリコンのプロセッサーに搭載できるトランジスターの数がおよそ2年ごとに倍増するという経験則だ。そのムーアの法則がいま、物理的限界に近づいている。装置のサイズが原子数個レベルまで縮小し、トランジスターに電流を流す金属チャンネルからの漏れ電流が発生し始めているためだ。放出された熱は、半導体のエネルギー効率の低下を招き、半導体が動作しなくなることすらある。
カーボンナノチューブは、そうした問題の完璧な解決策となる可能性がある。ナノチューブを使ったトランジスターはシリコンを用いたトランジスターより高速であるだけでなく、ナノチューブ製チップはシリコン製チップに比べて最大10倍もエネルギー効率が高い可能性があることが研究で明らかになっている。エネルギー効率が向上すれば、電子機器のバッテリー寿命を大幅に伸ばせるかもしれない。
研究者らは数十年にわたり、カーボンナノチューブを使った代替チップの開発に取り組んできたものの、製造上の悩ましい課題が研究段階から実用化への移行を妨げていた。ネイチャー(Nature)誌に8月28日付けで掲載された論文によると、MITの研究チームは、カーボンナノチューブのチップを大規模に製造するための大きな課題のいくつかを克服する …