KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
ナノチューブ・チップ実用化へ、MITが16ビットプロセッサー開発
FELICE FRANKEL
コンピューティング 無料会員限定
The world’s most advanced nanotube computer may keep Moore’s Law alive

ナノチューブ・チップ実用化へ、MITが16ビットプロセッサー開発

シリコンチップに比べて高速かつ消費電力が低いカーボンナノチューブのプロセッサーの実現に目途が立ってきた。MITの研究チームは、新たな手法を用いて、これまでに実証された中ではもっとも複雑とされる1万4000個以上のカーボンナノチューブ・トランジスターを搭載し、実際にプログラムを実行できる16ビットプロセッサーを開発した。 by Martin Giles2019.09.02

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、カーボンナノチューブ(壁面の厚さが炭素原子1個分の円筒構造体)を使った世界最先端のチップを発表した。従来のソフトウェア・プログラムを実行できるこの新しいマイクロプロセッサーの開発は、シリコンの代替品を探求する上での重要な節目となる可能性がある。

エレクトロニクス産業は、ムーアの法則の減速の問題に苦闘している。ムーアの法則とは、シリコンのプロセッサーに搭載できるトランジスターの数がおよそ2年ごとに倍増するという経験則だ。そのムーアの法則がいま、物理的限界に近づいている。装置のサイズが原子数個レベルまで縮小し、トランジスターに電流を流す金属チャンネルからの漏れ電流が発生し始めているためだ。放出された熱は、半導体のエネルギー効率の低下を招き、半導体が動作しなくなることすらある。

カーボンナノチューブは、そうした問題の完璧な解決策となる可能性がある。ナノチューブを使ったトランジスターはシリコンを用いたトランジスターより高速であるだけでなく、ナノチューブ製チップはシリコン製チップに比べて最大10倍もエネルギー効率が高い可能性があることが研究で明らかになっている。エネルギー効率が向上すれば、電子機器のバッテリー寿命を大幅に伸ばせるかもしれない。

研究者らは数十年にわたり、カーボンナノチューブを使った代替チップの開発に取り組んできたものの、製造上の悩ましい課題が研究段階から実用化への移行を妨げていた。ネイチャー(Nature)誌に8月28日付けで掲載された論文によると、MITの研究チームは、カーボンナノチューブのチップを大規模に製造するための大きな課題のいくつかを克服する …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る