これから先、自動運転車のすばらしい未来について耳にすることがあったら、こんな光景を思い浮かべてみるといい。経済崩壊後、危機的な状況で生活を続けるベネズエラ人が、ノートPCの前に座り、木や自転車の写真の輪郭を描いてロボット車両が衝突しないようにしている——。
2018年の状況はまさにそうだった。クラウドワークの専門家であるドレスデン工科大学のフローリアン・A・シュミット教授(デザイン)は言う。「彼らはかつて中流階級で、教育水準が高く、インターネット・インフラにも恵まれながら、突然貧困に陥った人たちです」。シュミット教授はこの新たな労働市場に関する論文の執筆者だ。ドイツ労働組合連合の研究部門であるハンス・ベックラー財団の依頼で執筆された論文は、8月第3週、英語で発表された。職探しに必死なベネズエラ人たちはいま、新たな働き口としてオンラインのクラウドソーシング・プラットフォームを見つけたのだ。自律自動車産業向けに労働力を供給するマイティAI(Mighty AI)、プレイメント(Playment)、ハイブ(Hive)、スケール(Scale)といった企業が、ギグワーカーを従業員と見なすべきかどうかをめぐる議論の新たな主戦場になる可能性もある。
昨年だけで数十万ものベネズエラ人の労働者が、職を求めてこれらのクラウドソーシング企業に登録した。労働力の75%がベネズエラ人だった企業もあった。現在も、マイティAIへのトラフィックの75%がベネズエラ国内の求人サイトから来ている。これらの企業が提供するデータラベリング作業は、アマゾンのメカニカル・タークといったプラットフォームほど高い賃金は払わないかもしれないが、より安定した収入源を提供するのは確かだし、インフレ率が1000万パーセントに達したベネゼエラの労働者に安全措置を提供しているとも言える(マイティAIにコメントを求めたが、回答は得られなかった)。
ラベル付けされていないピクセルはなし
大量のデータにラベル付けする低賃金労働者に人工知能(AI)が依存していることは、すでによく知られている事実だ。音声録音の文字起こしからNSFW(職場閲覧注意)画像の識別まで、あらゆるタスクを人間がこなしている。マイティAIヤプレイメントといった新しいクラウドソーシング企業は、自動運転車開発競 …