健康長寿社会がもたらす
新しい世代間対立の可能性
将来、医学の進歩により、より健康的な高齢者が現役を退く時期がますます延びたらどうなるのだろうか。ロンドン大学の哲学者レベッカ・ローチ博士は、80代が政治、文化、そして経済を牛耳るようになった社会では、各世代の役割に対する現代の考え方はあまり意味をなさなくなると考えている。 by Rebecca Roache2019.08.29
昨年、スウェーデン人のグレタ・トゥーンベリは、気候変動運動の看板娘としてわずか15歳で有名になった。16歳になる頃にはノーベル平和賞にノミネートされ、トゥーンベリに触発された世界中の子どもたちが気候変動対策を要求して学校ストライキを実施している。
だが、若者にできるのは抗議だけだ。結局、重大な決定を下すのは若者ではなく、中年層の人々なのだ。
45歳から65歳までの人々が社会のルールを定めている。米国の新任上院議員の年齢の中央値は51歳、英国の国会議員の平均年齢は50歳、そしてフォーチュン500やS&P500に選ばれている企業の最高経営責任者(CEO)の平均年齢は53歳だ。もちろん例外もある。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOはわずか35歳だし、ドナルド・トランプ大統領は73歳だ。だが、全体としては、支配権を有しているのは中年層である。中年層より若い世代は、一流の仕事に求められる経験や影響力に欠けており、中年層より年齢が上の世代は、健康上の理由や、単に社会的なプレッシャーに屈して身を引いている。現代では、社会の年配者たちにアドバイスを求めたり、知恵を求めて相談したりすることもある。しかし、年配者たちのアドバイスに従って行動するかどうかを決めるのは中年層であり、年配者たちの知恵をどう実践するかを決めるのもまた中年層なのだ。
医学により人々の健康と鋭敏さが長く保たれるなら、将来は80代の人々が現代の50代の人々の役割を担うようになるかもしれない。そうした80代の人々は、現代の50代の人々と能力が等しく、その上、知恵と経験では優っているだろう。次世紀の変わり目までには、社会を動かすのは、50代の人々ではなく80代の人々になっているかもしれない。
そのとき何が起こるのだろうか。政治、文化、そして経済を運営するのを80代の人々に任せている世界では、各世代の役割に対する現代の考え方はあまり意味をなさなくなるはずだ。
そのような世界には当然リスクがある。最も重要な決定を下すのが80代の人々になれば、この世代の利益が他の年齢グループの利益を押しのけてしまうだろう。そうなれば、今日すでに見られるような世代間の不平等が悪化する恐れがある。ミレニアム世代は以前の世 …
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