タンパク質は、生物の構成単位である。鎖状に長く連なるアミノ酸からできており、自己組織化して極めて複雑な分子マシンになる。このような分子マシンには、mRNAの遺伝情報に基づいてタンパク質を合成するリボソームや、足場の役割を果たす細胞骨格である微小管、二足歩行で歩くように動くキネシンなど、さまざまなものがある。
まるで、鎖状に連なったレゴのブロックが突然集合してロボットに姿を変えるかのような自己組織化のプロセスは、現代科学における驚異の1つである。自己組織化が起こる仕組みはまだよく分かっていないが、自己組織化によって決定されるタンパク質の形状が、タンパク質の機能や他のタンパク質との相互作用の仕方を決定することが明らかになっている。
すなわち、タンパク質の形状を測定することは極めて重要な課題なのである。もっとも一般的な測定法は、タンパク質の結晶を作り、X線結晶構造解析を用いてタンパク質の構造を決定する方法だ。
この手法が問題なのは、ほとんどのタンパク質が結晶を形成しないためである。たとえ結晶を形成したとしても、すし詰め状態となったタンパク質分子のすべてが同じ形状になるとは限らず、不正確な測定結果につながる可能性がある。
核磁気共鳴法(NMR法)と呼ばれる別の手法では、溶液中のタンパク質の画像を作り出すが、タンパク質を密に充填させて塊にする必要がある。この場合もやはり、測定対象にできるタンパク質はほんのわずかしかない。
一方、ごく一部のタンパク質は、両方の手法を用いて構造を捉えることができる。このこ …