この猛暑は気候変動の影響?
それともただの異常気象?
気候研究者たちはいまや、高精度のコンピューター・シミュレーションを高速に実行することで、ある地域で発生した異常気象が気候変動の影響によるものなのかどうかを、迅速に判断できるようになった。たとえば、7月末に欧州を襲った熱波は、ほぼ確実に気候変動が原因であるとしている。 by James Temple2019.08.19
7月下旬、欧州全域を記録的な熱波が襲った。その1週間後、ある研究グループは、人命に関わるような猛暑が続いているのは、ほぼ確実に気候変動が原因だと宣言できる状態にあった。
8月2日、同じ熱波がグリーンランドの氷床を半解けにしている中、ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)は、何十年間も温室効果ガスを排出し続けた結果、極端な異常気象が起こる可能性が一部地域で100倍にも達していると報告した。
WWAは、「人間が気候に影響を及ぼしていなければ、フランスやオランダでこうした高温になる可能性は極めて低い」と結論付けた。WWAは、最近発生した極端な異常気象への気候変動の関わりを調べるために組織された、国際的な緊急対応チームである。
ほんの数年前まで、気候科学者は特定の暴風雨や洪水、干ばつの原因については、実質的にほとんど肩をすくめるだけだった。米国科学アカデミーが2016年の論文で言及したように、「どの単一の事象も気候変動が原因だとは言い切れません」といった具合だ。
だが、気候モデルの改良やこれまでの分析の膨大なライブラリー、気候システムへの理解の深まりなどにより、いまや研究者はしばしば、気候変動が特定の事象をより起こりやすく、より過酷にしていると確信を持って言い切れるようになった。
こうした研究によって、「100年に一度の干ばつ」や「1000年に一度の洪水」といった時代からすでにどれだけかけ離れているか、起こりつつある脅威にどんな方法で対処しなければならないか、私たちはよりはっきり認識できるようになっている。
「この種の科学を用いて、気候変動は実際に何を意味しているのかを私たちは理解し始めています」。オックスフォード大学・環境変動研究所の所長代理で、WWAの共同研究者であるフリーデリケ・オットー博士はいう。
重要なことは、WWAの研究は、欧州の熱波のように気候変動が予測よりも速く加速している場合 …
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