「自分自身に使用しないように」という警告文を表記しない限り、カリフォルニア州で「遺伝子治療キット」を販売するのは違法になる。
しかし1つ問題がある。そのようなキットが存在するかどうかは不明だ。とにかく、今はまだ存在しない。
この消費者保護規定は、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサムが7月30日に署名した法案に含まれており、来年1月に施行される。遺伝子研究に革命をもたらした万能の遺伝子編集ツール「クリスパー(CRISPR)」を利用する愛好者向けキットが対象となる。
特定のDIYクリスパー商品の販売は、「本キットは自己投与用ではありません」という明確な注意書きを記載しない限り、禁止されることになる。
「これは米国で初めてクリスパーを直接規制する法律です」と、法案を作成した共和党のリン・リン・チャン上院議員は言う。
新しい州法はカリフォルニア州の住人、ジョサイア・ゼイナーに狙いを定めているようだ。ゼイナーがオークランドで経営している会社「オーディン(Odin)」は、遺伝子工学キットをオンラインで一般向けに販売している。2017年には、自身の腕にクリスパーを注射する姿を撮影して物議を醸した。
「明らかに私を標的にしていますね」。歯に衣を着せない発言をするバイオハッカーであり、無資格で医療行為をしたとして現在、カリフォルニア州消費者問題局(California Department of Consumer Affairs)の調査を受けているゼイナーはそう語る。
チャン議員のスタッフに、法案の影響を受ける可能性のある製品例について尋ねると、ゼイナーが販売している159ドルの箱入り商品のアマゾン広告へのリンクを示した。この商品には、「家庭で細菌のゲノムを正確に編集するために必要な物がすべて含まれています」。
しかしながら、このキットは細菌の遺伝子を対象としているため、人間には何ら影響を及ぼさない。したがって、警告ラベルが必要な理由も明確ではない。「スケートボードに『高速道路での使用不可』というステッカーが必要だと言っているようなものです。まったく意味がありません」とゼイナーは言う。
MITテクノロジーレビューは、ゼイナーや他の業者が現在販売している商品の中に、チャン議員の法案が定めた定義に当てはまるものを見つけることはできなかった。
いずれにせよ、DIY遺伝子治療製品の販売はすでに禁 …