KADOKAWA Technology Review
×
人気暗号通貨取引所を襲った標的型攻撃、その驚くべき実態
Ms, Tech; Original images: pexels
ブロックチェーン 無料会員限定
An attempted heist at Coinbase was scary good, even though it failed

人気暗号通貨取引所を襲った標的型攻撃、その驚くべき実態

暗号通貨取引所コインベースへの最近の攻撃の詳細が判明した。攻撃自体は失敗に終わったものの、ソーシャルエンジニアリングを巧みに利用し、ブラウザーのバグを突いて従業員のコンピューターを乗っ取ろうとしたその手法は、驚くほど高度に洗練されたものだった。 by Mike Orcutt2019.08.20

人気暗号通貨取引所であるコインベース(Coinbase)の十数人の従業員が、5月に英国のケンブリッジ大学のある管理者から1通のメールを受け取ったとき、その内容に警戒させる要素はなかった。メールの送信者は自らを「グレゴリー・ハリス」と名乗り、大学で「研究助成金の管理者」を務めているとして、ある経済賞の候補者の選考を手伝って欲しいと記していた。

それから2週間、何人かの従業員がこのアカウントとメールのやり取りを続けたが、何もおかしなことはなかった。それらがすべて不正行為の一部であることは、ほとんど気付かれていなかった。

このアカウントの本当の持ち主が長期のやり取りをしていた裏には、コインベースのバックエンドのネットワークへのアクセスを確保し、同社がユーザーに代わって保管している数十億ドル相当の暗号通貨の一部を盗む意図があった。6月17日、攻撃者はさらにメールを送ってきた。そのメールに記載されていたURLをファイアフォックス(Firefox)ブラウザーで開くと、マルウェアがインストールされ、ユーザーのコンピューターが乗っ取られる仕組みだった。コインベースのセキュリティチームによると、「かなり標的を絞った高度な」攻撃の一部だったという。

新たに公表された詳細から、めったに知ることのできない、暗号通貨取引所への攻撃の細部が分かってきた。コインベースのセキュリティチームは資金が盗まれる前に何とか攻撃を検知し、防いだ。しかしその過程において、防御する側は自分たちが高度な熟練者を相手にしていることに気付いた。

コインベースの最高セキュリティ責任者であるフィリップ・マーティンは、莫大なコストと通常ではありえないほどの努力の大きさに、今回の攻撃の独自性があったと語る。「攻撃者 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Why handing over total control to AI agents would be a huge mistake 「AIがやりました」 便利すぎるエージェント丸投げが危うい理由
  2. An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る